【一章三話:絶望と邂逅】

 それは、竜也、ユウのどちらが見ても悲惨で吐き気を催すには十分だつた。
床には赤い液体が滴り双方に手を伸ばしている男女の一組がそこにはいた。その後ろには武装した鎧の人間が立っていて、その後ろでは神官がほくそ笑んでいる。騎士は剣に付着した血を払うように横に凪いで血を払った。その騎士が持っている剣先はユウに向けられた。そのとき、聞き覚えのある声がした。
「ああ、少し待ちなさい」
神官だ。昨日訪れてきた奴と同じ声だった。
「そのガキには魔力が無いので殺しても構わないのですが昨日何故か私のスキルが妨害を受けましてね。両親がやったと見てもいいのですが妙に胸が騒ぐのです」
と続けると、
「なので人間として扱わない剣奴として育ててみようと思うのです」
それからユウは神官に連れていかれ奴隷商人に引き渡された。奴隷商人は神官の話を聞いたのか嬉々として受け取っていた。

 これからのユウの生活は過酷を極めることになる。朝は早くから基礎訓練、昼間も基礎訓練、夜も遅くまで基礎訓練。食事は最低限で干し肉が出る日はご褒美であるというほどだった。ユウは両親の死をきっかけに瞳に光が宿らず、魔導書の存在すら忘れ、奴隷の首輪を着けられたことで反抗する意志を持つだけで全身に苦痛が走るありさまだった。そんな生活が六年続いたある日、一つの事件が起きた。

 《報告:スキル・保存を獲得しました》
 「ああ」
久々にきいた魔導書の声に答えようとしたが喉が限界まで涸れているのかまともに声はでなかった。
《特定のスキルを手に入れたことによりスキルの全てを開示することが可能になりました。実行しますか?》
「ああ」
やはりまともに喋れない。
《その言葉を肯定と捉えます》
スキル:言語翻訳、解析、無作為(保存)
《保存を用いて保存を保存しますか?》
「ああ」
《肯定と捉えます》
これを機にユウは少しずつ意志を取り戻していくことになる。
スキル:言語翻訳、解析、保存、無作為
 翌日。
《スキル・無作為が更新されました》
スキル:言語翻訳、解析、保存、無作為(身体強化E)
《スキル・保存を用いて身体強化Eを保存します》
スキル:言語翻訳、解析、保存、身体強化E、無作為
翌日。
《スキル・無作為が更新されました》
スキル:無作為(確率変動)、etc.
《スキル・保存を用いて確率変動を保存します》
スキル:確率変動、無作為、etc.
翌日。翌日。翌日。・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

そうして1年の月日が過ぎた。
スキル:言語翻訳、解析、確率変動、保存、無作為S、身体強化S、体術S、剣術A、槍術A、盾術C、鞭術C、騎馬術B、全魔法強化Betc.
スキルの後ろに付いているアルファベットはSから順にA~Eへと位が下がっていく。E二つでDに同様にSまで上がる。無作為の場合はDになると一度に二つのスキル出るCなら四つ。つまりSでは2の5乗つまり32ものスキルが一度に出ることになる。尚、これは全て魔導書が自動で行ったものなのでユウは知らない。ちなみにユウの持つスキルに解呪Dというものもあるが、奴隷の首輪を外すためには解呪Bは必要だとされているのでまだ首輪に囚われたままだ。さらに無作為で出るスキルは全てEまたはランクに作用されないものである。なので最低あと6個の解呪Eを出さなければならない。さらに既存のスキルより数が多くないと統合されないという面倒な仕様まで持ち合わせている。つまり、無作為がA~Sに上がるためにはAの最大16個全てが無作為である必要があったのだ。それを成したユウの運は中々のものである。例え確率変動で確率を弄ったとしても(魔導書が)

翌日。
《スキル・無作為Sが更新されました》
スキル:無作為S(体術E×4、解呪×4、剣術×4、身体強化×6、無作為×3、騎馬術×1、重力操作×3、気象変動×2、盾術×2、全魔法強化×3)
《スキルの統合を開始します。スキル解呪がCにクラスアップしました重力操作がCにクラスアップしました。新たに手に入れた気象変動がDにクラスアップしました》
スキル:言語翻訳、無作為S、解呪C、重力操作C、気象変動Detc.

翌日。
《スキル・無作為が更新されました。情報の最適化により最終結果のみを表示します。スキルの統合により解呪がAにクラスアップしました。新たなスキル鑑定に解析を統合しました。それにより自分に対しての解析鑑定が可能になりました》
スキル:言語翻訳、無作為S、解呪A、解析鑑定etc
《解呪がB以上になったので首輪の解呪を開始します。成功しました》
急速にユウの瞳に光が宿る。それは奇跡と言ってもいい。こうしてユウは自由への切符を手に入れた。

ユウ
魔力量:???
スキル:言語翻訳etc.