翌日、ユウは背中に当たる固いものにうなされて目を覚ました。目の前には白い祭服のような羽織を着た男が立っていた。
(お、お前!誰!)
当然の疑問である。
《提案:スキル解析を使用しますか?》
(は?え?ああ、頼む)
《報告:解析結果を掲示します》
その言葉と同時に目の前に情報が掲示された。
名前:■■■■
種族:人間族
職業:神官
《続けて、名前の解析に失敗しました》
神官?なんでそんなやつが目の前に?
「では、始めます」
神官が慣れた口調で言うと、神官の手のひらに光が集まる。そして一言。
「鑑定」
《報告:スキルによる個人情報への介入を確認しました。承諾しますか?》
(個人情報!?NOだ)
「どうですか?神官様」
期待を孕んだ瞳でアンナは神官に尋ねる。
「おかしい。どうにも不可思議な現象が起きているようです。まさか、魔力が無いだなんて」
「魔力が無い?」
両親が顔を見合せた。そんなはずがないと。この世界では、全ての生あるものに魔力が宿っているとされているのだ。なので、魔力が無い=死んでいる、とも形容されることもあるのだ。科学、医療が発達してないが故にスキルや魔法といった超自然現像に頼らざるを得ない。
「魔力が無いなんてありえない。昨日は確かにあったんだ。でなけりゃあの爆発は説明できない」
「そ、そうよ!」
「と、言われましても今まさに魔力が無いという現象に直面しているので私からはこれ以上はどうとも」
そう胡乱げに語る神官。
(なあ、少し聞いてもいいか?)
《はい》
(さっき個人情報がどうとか言っていたけどそれに魔力量も含まれてたりするか?)
《肯定:その通りです》
(やっぱりか)
《尚、昨日の爆発時に魔力量が枯渇し現在回復完了している量は微々たるものです》
(まあ、なら大差ないか)
そんなことを考えている竜也もといユウとは裏腹に周りの雲行きは怪しくなるばかりである。沈黙を破ったのは神官だ。
「教会の教えとして魔力の無い者の生存は認められませんので至急薬で安楽死させるなりして存在を周りに広めないことを推奨します」
「そんなバカな真似ができるか!俺たちに子供を殺せと?嫌だね!」
「ええ、神官様の仰ることであっても看過できません」
対してユウを生かしたい両親。
「それは教会と対立する宣誓と受け取っても構わないですか?」
二人は押し黙ってしまう。教会とは国に次いで軍事力を持っているものなのだ。生きとし生きる者を救うはずの教会が人を殺す力を持っているとは中々に皮肉なものである。教えはどうなっているのだ教えは、とでも言いたいところである。
こんなことが繰り広げられているというのに当の本人は、
(なあ、なんでお前の声は周りに聞こえないんだ?)
《解:これはあなたのスキルによる物です。》
(そんなスキルもあるのか)
《私のことは魔導書とでも呼んでください》
(なんだその厨二臭い名前は)
《提案:ではあなたが私の名前を決めてください》
(ああ、魔導書でいいや)
こんな話に華を咲かせていた。サッと引き下がったユウであった。
(そういえば、周りがさっきから騒がしいな)
《どうやら、あなたの両親は教会と対立することになりそうです》
(教会と対立すると弊害が?)
《もちろんございます。教会とは国に次いで軍事力があり信徒からすれば半ば反逆者のレッテルを貼られる事に等しいです》
(え、やばくない?)
《やばいです》
今起きてることをようやっと認識したユウだった。
「ええ、対立するわ!」
「ああ」
(ちょっと待った!なんで対立すんだよ)
そんなユウの心の叫びは届かず
「分かりました。そのように手配致しましょう」
そう語った神官はそのまま踵を返して帰って行った。
ユウ
魔力量:???
スキル:言語翻訳、???