(見覚えのない天井・・・)
(ここ、どこだ?)
(ま、眩しい)
視界がボヤける
(木の屋根?)
(ロウソク?)
(いつの時代だよ!)
(ん?誰だ?)
「■、■■■■■」
(何語?)
《スキル:言語翻訳を習得しました》
(え?)
「あらぁ、私たちの可愛い坊やが目を覚ましたわよ、あなた」
「ほら、パパてちゅよ」
(何だこの人たち)
(ん?)
手を伸ばした。そう、十七歳男子が手を伸ばした━━━━━━━はずだった。
いつも見える位置に手はなく、代わりに自分の手の付け根の方へ視線を向けると、手があったのだ。
「あなた、この子の名前決めたのかしら?」
(何を言ってるんだ?俺は朝川竜也だぞ?)
(そういえば、身体が上手く動かせないな。それに、身体がいつもと違う)
「おう、俺らの子供の名前はアレキサンドラだ!」
「却下するわ。長い上にそんな貴族様みたいな名前、何言われるか分かったものじゃないわ」
「そうか?」
「そうよ。そうねぇ、ユウ、なんてどうかしら」
「お、いいな!短い上、どこか気品がある」
「決まりね。ユウ、あなたの名前はユウ。私たちの可愛い子よ」
(なるほど、この人たち、もしかしなくても頭がおかしいのか)
「あ、そうだ!あなた、この子の属性を見ましょ」
「そうだな!」
(は?え?属性?何の?ー)
そう言われ竜也に近づけられたのは、そう、ただの石である。
少なくとも、竜也の目にはそう見えている。
(何する気だ!やめろ!)
石を竜也に近づける男と女。目をつぶる竜也。そして、竜也の額に触れさせた。
その石は意志を持つように竜也の額で溶けた。そう、溶けたのである。
「あれ?おかしいわね。普通ならこの時に光るはず」
「ああ、確かにこの石、適正属性の測定を付与された魔石は額に触れさせれば勝手に溶けてその人の属性の色に光るはずだ」
「何も起こらないなんてあるのかしら」
「属性無し以外ではありえないはず。しかも属性は親から遺伝するはずだ」
(ん?なんだ?)
何も起こってないことに気がついた竜也は目を開いた。
「俺が火、風、闇で、お前は水、土、光だったよな?」
「ええ、その通りよ」
(分かったぞ、こいつら厨二病なんだな!いい歳して)
「まさか!」
「いきなり大声上げてどうした?」
「いえ、あくまで可能性ではあるけれど、あなたの火と私の水、あなたの土と私の風、あなたの闇と私の光、それぞれが相殺し合って属性無しになったんじゃ」
「おいおい、そんな事聞いたことねぇぞ」
「私もないわ」
(ちょっと待て、どうにも様子がおかしい。腕が短くなったり、手が小さくなったり、見覚えのない天井で目が覚めた上に見覚えのない男と女に何かされている。あっ、まさかとは思うがもしかして、異世界転生!?いや、ラノベの話じゃあるまいし、そんな事起こりうる訳・・・)
《報告:自我の定着が完了致しました。朝川竜也の異世界〈グランドフィア〉への転生が完了致しました》
(ま、まじか!あれ?でも、これがラノベとかにある異世界転生なら死んだ記憶があるか、転移でも魔法陣で飛ばされる記憶があるはず)
《続けて報告:朝川竜也の異世界への転生に伴い、元の世界の記憶が1部失われていることが確認されました》
(うんうん、なるほどなるほど。つまり、死んだかどうかも不明でこれが異世界転生なのか転移なのかも不明と。まあ、そんな事気にしても今更だとは思うが)
「どうする!無属性なんてこの時代やっていけねぇぞ!」
「そうね。生活のほぼ全てが魔法中心ですものね」
(ん?ちょっと待て。さっきから属性が無いだの、やっていけないだの、不穏な言葉が聞こえるが、普通なら、異世界転生したらチートな力持ってるものじゃないのか?弱いだけならまだしも、無いってどういうことだよ。生活ができないのは流石にやばいだろ)
「でも待って、この子魔力量は私たちより多いわ」
「ん?ああ、こりゃ凄いぞ」
「測ってみましょ!」
「そうだな」
そう言って女、もとい母親、アンナが持ってきたのは透明な宝珠。その上に竜也を乗せた。すると、
「おい、これって」
「やばいわね、最悪爆発する」
(は?爆発?俺、異世界来てすぐだぞ?流石にまだ死にたくない!)
そう思った竜也は火事場のバカじからとでも言うべき奇跡を起こした。
まだ扱えないはずの魔力に指向性を持たせ爆風を自分に当たらないように上へ逃がしたのだ。これにより、竜也もといユウは魔力切れを起こして深い眠りについた。
「おい、今の見たか?」
「ええ、この子咄嗟に魔力を制御したわね」
「ああ、しかも被害が少なくなると思われる上に自分に当たらないようにだ」
「この子」
「こいつ」
「「天才!?」」
そこには1組の親バカがいた。
ユウ
魔力量:0
スキル:言語翻訳、???