━━━数時間前━━━
「よう!竜也!」
俺は後ろの席で腐れ縁の陽気なイケメン、俗に言うモテ男に声をかけられた。名前は白鷺空。
「なんだよ」
「なんだよって、素っ気ないなー」
「別にいいだろ」
そう、俺はこの男が苦手だ。何かと明るい。別に明るいのが悪いとは言わないが、時と場合は考えて欲しいものである。
「で、万年赤点と争ってる竜也クン、今回のテストはどうだったのかなぁ?」
「まあまあ」
「ほお?あの竜也の口から『まあまあ』なんて言葉が出るとはねぇ?」
「俺のテストなんて、お前には関係ないだろ」
「あるさ、僕のライバルなんだから!」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ」
「うん?誰が馬鹿だって?」
「お前しか居ないだろしかも、毎回10位以内に入ってるやつがライバル宣言するとか馬鹿以外の何でもないだろ」
「あと、その口調いつまで続ける気だ?」
「あー、あのな?別に勉強で争ってる訳じゃないんだよ」
「お前、まだ寧音のこと諦めてないのかよ」
そう、俺がこいつを嫌っている理由の主要因はこれ「寧音を諦めていない」という事だ。これには寧音もうんざりしているらしいので本当にやめて欲しい。
「諦める訳ないさ!竜也も意地悪くなったもんだな」
「別に意地悪したい訳じゃないさ。ただ、こればっかりは寧音の気持ちを汲んでやれって言ってるだけで」
「そんな事してて、恋人持ちから奪えるとでもおもってんのか?」
「いや、奪うなよ」
「いつでも寝首を搔く準備はしとくから覚悟しろよ」
「あー、はいはい」
空が席から離れようとした時、ガラガラとクラスの扉が開いた。
「竜也いる?あ、いた!早くしないと時間なくなっちゃうよ!」
寧音が呼びに来たのだ。
「ほう、これから遊びか?」
嫌な予感しかしない。まあ、的中するんだが、
「寧音ちゃん、それ、俺もご一緒していい?」
あくまで、お疲れ様会だ。断る理由がなかったのだろう。それに、寧音は優しいからな。
「うん、いいよ」
いつもより声のトーンが少し低いから好意的ではない。でも、理由もなく断れなかったんだろう。寧音は優しいからな。お疲れ様会では何も起こらない訳もなく・・・というようなことは起こらなかった。(九割九分九厘九毛空のせいだ)
しかし、楽しかったことは楽しかった。そう楽しかった〝はず〟なのだ。