番外編 妖術などの技について

歌恋かれん「ねえねえ、イチ兄~ふと気になったんだけどさ、妖術ようじゅつって結局何なの?」
一兎いちと「妖術ってのは妖怪が妖力を使用して使う技」
歌恋「いや・・・それは知ってるよ。私が聞きたいのはもっと詳しいこと」
一兎「詳しいことねぇ・・・そうだな・・・どこから話せばいいか。うーん、まず、妖力ってのは、妖怪たちの体に流れていて、その妖怪の属性を決めるものだ。例えば性質Aが炎の性質、性質Bが水の性質だとすると、とある妖怪の妖力の中には性質Aだけがあり、また別の妖怪には性質Bがある。とまあ、これが妖怪の属性を決めるんだ。まあ、俺みたいなのは、AもBも全部持っているから複数の属性が使えるんだけどな」
歌恋「つまり、妖力には属性を決める遺伝子みたいなのがあって、それによって行使できる属性が違うってこと?」
一兎「まあ、そういうことだ。んでもって、それを技として使うのが妖術だ。妖術の使い方は妖怪ならだれでも知っている・・・だが、俺みたいに妖力はあるけど妖怪としての遺伝子が弱いと誰かに教わるまで使えない」
歌恋「じゃあなんで私は教わらなくても使えたの?」
一兎「十中八九兄さんの妖力を取り込んだからだな。兄さんは半妖だけど、純粋な妖怪に極めて近いからな。それが理由だろ」
歌恋「まって?零司れいじさんの妖力って『死属性』だよね?ならなんでその性質を受け継がずに私は『光属性』を使ってるの?」
一兎「(なるほどな、兄さん、歌恋に自分の血を分けて半妖はんよう にしたのか・・・)まあ、そういうケースもあるんじゃないか?ほら、妖力としてじゃなく、別の形で付与するだろ、例えば、兄さんの妖怪としての遺伝子を歌恋に与えた・・・とか。(まあ、歌恋の場合、兄さんの血液を吸収すること、妖怪の遺伝子と、魅守 みかみ の血を吸収させたんだろうな。)妖怪の遺伝子という情報だけでは、属性までは決まらないからな」
歌恋「そうなんだ・・・じゃあさ、妖力において一番強い属性ってなんなの?やっぱり『死属性』?」
一兎「それは違うかな。一番強いのは『氷属性』だ。というか、これはこの世界に存在する能力全部に言えることだ」
歌恋「え?氷が?なんで?」
一兎「氷ってのは、『水』が状態変化してできるものだ。だから、氷と水は同じものとしてみることができる。だが、能力において『水』というのは『氷』と別の属性として存在している。本来同じであるはずのものが別のものとして存在している。これって、世界の理を逸脱していることにならないか?もっと言えば、能力の『氷属性』はたとえ炎で溶かされようとも絶対に『水』とはならない。妖力やセフィラムエネルギーで生成された瞬間からなくなる瞬間まで、『氷』は『氷』のままなんだよ。世界の理から大きく逸脱している物ほど、この世界においては強いものとされるんだ。ちなみに、俺の『最終演目 ラストステージ 』が氷を操れないのはそれが理由だ。まあ、水から氷を作ることもできるが、それだとめんどくさいからな」
歌恋「なるほど、他の属性はまだ世界の理の範疇におさまってるんだね。じゃあさ、【魔道具プライズ】ってのはどうなの?『エラー・ザ・ブレード』とか、『百鬼ひゃっき 勾玉まがたま』とか、すごい強い力をもってるでしょ?」
一兎「そうだな・・・確かにあれらは世界の理から逸脱している。神やらなんやらと関係している不思議なアイテムのことを【魔道具】というが、実際にはそう言った物のことじゃないらしいな。これはこの前、お母さんから聞いた話なんだが、【魔道具】ってのは世界の理から逸脱した物のことを指すんだ。例えば、『エラー・ザ・ブレード』あれは、時の概念がない。経年劣化なんてしないし、剣に込めた力は使うまでいつまでも保持される。そして、『百鬼の勾玉』は本来時間と共に消えていくはずの魂を永い間消滅させずに封じ込めている。まあ、どちらにせよ世界の理からは逸脱してるな」
歌恋「それじゃあ、イチ兄の神剣は?あれは違うの?」
一兎「ちがうね。あれは、神々が俺にセフィラムエネルギーを介して刀を呼び出せるようにしてるだけで、実際にはセフィラム能力と同じなんだ。能力はまだ理を逸脱していないからな、【魔道具】には分類されない」
歌恋「へぇ~って、しまった・・・話のほうが逸脱してた・・・話を戻そう?妖術について聞きたかったんだよ」
一兎「そういやあそうだったな。んで?あれか、属性の説明が終わったのか。じゃあ、次は妖術の行使だな。お前も使ってるからわかっているだろうが、妖術ってのはいちいち技名を口に出さなきゃいけない。なぜだかわかるか?」
歌恋「え?わからないなぁ・・・魔法の詠唱的な?」
一兎「まあ、半分くらいは正解だ。でも、どこぞの漫画のように無詠唱で発動はできない。それは、妖術名の宣言が、複数の役割を担っているからだ」
歌恋「複数の役割?」
一兎「ああ、そうだ。まず一つ、技のイメージを構築するためだ。お前も、妖術の名前を口にすると自然とどういう技が発動されるか、脳内で明確なイメージができるだろ?」
歌恋「うん、そういえばそうだね」
一兎「つまりはそういうことだ。そして二つ目、使用する妖術のグレードを口にすることで使用する妖力の量を体の中で勝手に調整してくれる。まあ、これに関しては、第壱幕だいいちまく から第拾幕まで、数字が大きければ大きいほど妖力の消費量が変わってくるんだ。まあ、長時間使用するタイプの技や、『第伍幕だいごまく逆境超越 ぎゃっきょうちょうえつ 』のように傷を負った分に比例するみたいなのは下手すると第拾幕よりさらに上のグレード、幕引きよりも消費量が多くなるがな。そして三つ目、これが最大の理由だ。技名を口に出さないとそもそも妖術が発動できないようになっている。妖術の発動には、声紋認証のようなものがあって、ちゃんとその妖力の持ち主が発動しているかを確認されるんだ。妖術は『誰が、どのグレードの、どういう技を、発動するか』というプロセスを通らなければいけない。お母さんが俺の体で妖術を使わない理由はそれだな。終焉回路 ラストプログラム で声を変えてるから俺だと認識されない。まあ、使わなきゃいいんだろうけど、そもそもお母さんは妖術の練習をしてないから、使い方がわかっていても感覚がわからずに変なことをしてしまうかもしれないしな」
歌恋「なるほど。妖術って意外と複雑なんだね」
一兎「そういうことだ。複雑と言えば、実は秘守術ひかみじゅつも複雑なんだ」
歌恋「やっぱりそうなんだ。魅守の血が流れてないと使えないし、そもそも想いが強くないと使えないもんね」
一兎「ああ、これも世界の理から逸脱した力だからな。制約が多いんだ。想いが強くないといけないってのが一番大きいけどな。理から逸脱した力をその身に宿すから、その反動で体に変化がある。今まであったようなマントとか大きな黒い爪、宝石の華。それらは自分の体の一部が変化した物なんだ。お母さん曰く、髪の色が変化した実例もあるらしい」
歌恋「へぇ~そうなんだ。って、髪の色が変わるって言ったらイチ兄のお母さんがイチ兄の体を動かすときとか、血気開放けっきかいほう を使った時もそうだよね?それって世界の理から逸脱してるのが理由?」
一兎「あーお母さんのやつはその通りだな。死者が生者の体を動かし、更にその状態で自分の能力を行使してるからな。でも、血気開放は違うかな血気開放は、俺が終焉回路で体の性質を吸血鬼っていうやつと同じ状態にしてるんだ。血気開放は吸血鬼の固有能力みたいなもんだ。それを再現してるってわけ。まあ、それの効果で消費した血液が力となり、その力をストックしておく場所が髪の毛になっているってわけだな。髪の毛には神経とかないから、力をストックしておくにはぴったりなんだ」
歌恋「そういうことだったんだね。今日はいろいろ知れてよかったな。ありがとね、イチ兄」
一兎「ああ、またなにか気になることがあったら何でも聞いてくれよ。教えられる範囲でなら教えてやるからな」
歌恋「うん分かった!あ、じゃあさ、妖力全開放の使い方を教えて!っていうか、なんで最近使ってないの?」
一兎「あーそれはだな・・・歌恋が一回『ロイヤル・カーズ』の方に行ったぐらいから連戦が増えてきて、妖力全開放は効果が切れると妖力がほぼ空っぽになっちまうからな、連戦があるかもしれないと恐れた俺は、妖力を温存しておくためにあんまり使わなくなったんだよ・・・」
歌恋「ああ、そういうことだったんだね。納得したよ」
一兎「まあ、そうだな、歌恋に妖力全開放のやり方を教えるよ」
歌恋「わーい!やったー!」