-ICHITO`SVIEW-
俺と照はまだKと戦っている。
一兎「妖術、第拾幕、炎龍乱舞!」
照「くらいなさい!焔返し!」
俺が炎の龍を大量に出現させるのと同時に、照は大量の炎の雨を降らせた。俺にもあたりそうだが、俺はKの真下にいるので、Kが盾になってくれている。まあ、その盾を俺は攻撃しているわけだけど。
K「くっ、小癪な・・・妖術、幕引き、終炎ノ一太刀!」
すると、竜形態のKの尾が炎に包まれ、その炎が巨大化する。そしてその尾ですべてを薙ぎ払う、が。
照「でかいのは図体だけですね!はあっ!」
照はKの真上から槍で突進する。
照「あなただけが空を飛べると思わないでください。私のは天照大神様の力の一端なので、時間制限がありますが、それでもあなたを地上に突き落とすくらい簡単ですよ!」
その言葉通り、Kは照の攻撃を受けて落下してくる。照はKに槍を突き刺したまま地面に向かって突進を続ける。正確には、地面にいる俺に向かって突進を続けている。その様子はまさしく猪突猛進。真下にいる俺は、妖術を発動させる。
一兎「妖術、全・幕引き、一兎玖錬!」
一撃目、照の突進とと俺の炎属性の超高火力パンチに挟まれたKは苦しそうな声を出す。
そして、超高速で二撃目、三撃目・・・と殴り続ける。雷、水、風、氷、闇、土、光の順番で放出する属性を変える。俺が殴るたびにKの大きな体が大きく揺れる。
一兎「照、そこをどいてろよ!」
そして最後の一撃、死属性の強烈な一撃で、Kが空の彼方へと飛んでいく。
Kが地上に落ちてきたときには、人型に戻っており、動かなかった。
一兎「照、ありがとう。正直助かった」
俺がそう感謝の言葉を口にすると、
照「魅守一兎、やはりあなたは・・・」
一兎「ん?どうした?」
照「いえ、何でもありません」
照がなんかボソッと言ったので聞き返したが、何も答えてはくれなかった。それよりも、
一兎「そういえば照、お前、この前なんで俺を見逃した?いや、正直見逃してくれてありがたかったけどさ」
聞きたいことを聞くことにした。この言葉を聞いた照は、表情を全く変えずにこう言った。
照「ただの好奇心ですよ。あなたがこれからどんなことをするのか、気になっただけです」
俺がその言葉に首をかしげると、照は俺に質問をした。正確にはお母さんに。
照「魅守霊。あなたは魅守一兎に何をしたんですか?」
その言葉を照が口にした瞬間、俺の意識は闇に沈んだ。
-TERU`SVIEW-
私が魅守一兎の中の魅守霊に質問をした瞬間、彼の髪の色が変わった。おそらく、魅守霊に意識が変わったのだろう。そして彼女は私にこう言った。
霊「どこまで気付いているの?」
魅守霊は私を軽くにらみつけた。しかし私はそれに動じず、
照「魅守一兎の能力、『終焉回路』はあなたの能力だというのは確信しています。あと、魅守一兎が使える妖術が本当は炎属性ではなく、氷属性だということも」
私がそう言うと、魅守霊はため息をついて、困ったような顔をしながらこう言った。
霊「そうだよ。貴女が言っていることは正しい。本当の能力は、私の能力で認識できなくしてる。妖術のほうも、認知を無理やり変えて、教わったのは氷じゃなくて炎だって思わせてる。魂の力は最強だからね」
私の推測通りだった。魅守霊は続けてこう言った。
霊「属性のことは昔照ちゃんと一狼が戦ってたし、アマテラスもなんかあの人のことを調べてたからそこで分かったんだろうけど、『無影虚像』についてはどう考えてる?」
魅守一狼は、種族を超えて人と愛し合った。そのせいで当時は世界の理を壊していると言われて、神々から危険妖怪扱いされていたのだ。まあ、最終的に理を壊す行為というのは勘違いだったと結論付けられたわけだが。
私は、魅守霊の問いにこう答えた。
照「その能力は、魅守一兎の本当の能力とあなたの能力が彼の中に混在するための仲介人のような役割を果たしていて、実際には存在していない能力だと、推測しています。確信はしてないですが」
私の回答を聞いて、魅守霊は考え込むような顔をして、
霊「私も、その考えでいいと思うよ。一兎の本当の能力は私もわかってるんだけどね、『無影虚像』については全然わからなくて、前に鏡深夜って子が考察した、『反転能力
』っていうのも、あながち間違いではないと思うんだけど、それだと私の能力と『無影虚像』が表裏一体ってことになっちゃうから、私的には違うと思ってるんだよね。ちょっと前までは妖力全開放したときにしか使えない能力だったし」
魅守霊自身もあの力はわかっていなかったという事実に、私は驚いた。そして私はもう一つ聞いた。
照「そういえば魅守霊、あなたはどうして魅守一兎の本当の力を隠したんですか?それだけが本当に分からなくて。魅守一兎が捨て駒にならないよう、強くしたいというのであれば、他者の力よりも本人の能力を使ったほうがいいんじゃないですか?ミカエルは魅守一兎を強くしようとしていた側なので、そんなに弱い能力を与えたとは思えませんし」
私の質問をきいた彼女は、言おうか言わないか悩んでいるようだった。が、彼女は口を開いた。その顔は何かを決意したかのような顔だった。
霊「照ちゃん、一つお願いしていい?私の考えていることについて教える代わりに、協力してほしいの。私たちの計画に。本当なら私たちは敵対していないといけないのかもしれない。でも、これだけはお願いしたい」
と、深々と頭を下げられてしまった。それに私は、こう返した。
照「一つ、間違えていますよ。もう私たちは敵じゃないです。実は、魅守一兎を殺すという考えが却下されました。どうやら敵も我々の予想を超える強さを手にするみたいなので、魅守一兎を捨て駒にするレベルで戦ったら、敗北するかもしれないという結論に至ったので。一応言っておきますが、敵の強さをなぜ知っているのかに関しては、まだ言えないので伏せておきますが。彼にはこの世界の英雄になってもらいます。英雄にはご褒美が必要ですから、死なせません。彼は力の使い方を間違えることはないだろうと、私が進言しておいたので、そこは保証します」
これは本当のことだ。敵の強さが予想をはるかに超えている。それはあの悪魔の力が影響しているだが、これはまた別の話。私は改めて魅守霊に聞いた。
照「私はあなたに協力します。なので、あなたの考えていることを、教えててください」
その言葉に魅守霊はうなずき、私に計画を話し始めた。
霊「一兎の本当のセフィラム能力はね、強すぎるんだよ。だから、一兎の心が成長するまで、待っていようってことになったの。そして、私が死ぬとき、一兎の中に入り、記憶とかをいろいろいじった。そのあとは、一兎の中から外を観たり、一兎がピンチの時は無意識を装って勝手に体を動かしたり、能力が使えなくなった時も、そうやって勝手にバーンフェーズを発動させたりしたよ。って話が逸れちゃったね。じゃあ、ここから本題ね。最初に言っておくけど、このことは一兎にも誰にも話さないでね」
私はそう言われたので、絶対に話さないという決意を込めて、強く首を上下に振った。それを見た魅守霊は、安心したような表情を浮かべ、私に話した。彼女の計画を。
霊「私の・・・いや、私たちの計画。それは、戦争を止めることだよ」