第十四話 黒薔薇

-REIJI`SVIEW-
零司れいじ「ちっ、とうとう動き出したか」
俺は、キングに暴れるよう命じた。その理由は、『銀狼ぎんろう 』の連中をおびき出すためだったのだが、生命力を探知する限り、今引き止められているのは一兎いちと だけだ。なんでそんなことがわかるのかというと、俺が死属性の妖怪だからだ。死属性は、生物などの生命に関係する。そのため、生命力の探知ができる。一度会った人ならその探知だけで誰かの判別ができる。Kと戦っているのは一兎と人間でも妖怪でもないやつ。あの二刀流のやつと似たような感じだが、そいつとは違うやつだ。
零司「仕方ない、俺から行くか」
椅子に座っていた俺は立ち上がり、その歩を進めた。今から、めんどくさい連中を懲らしめに行く。その連中とは、セフィラム能力規制派の連中だ。あいつらは、俺たち妖怪にとっても敵だ。妖怪の力を利用しようとしているのだから。セフィラム能力が危険だとか言ってるのに、人間からしたら危険な妖怪の力を利用するのは本末転倒なのだが、あいつらは何を考えているのだろうか。

そんなことを考えながら歩いていると、見覚えのあるやつが通りかかった。
零司「今のは、人間もどきの二刀流使いか」
確かあいつは『銀狼』のメンバーだったはず。ついていけば規制派に会えるかな?そう思って、そいつを追いかける。ただ、あいつは速すぎるので、ついていくならあの技を使わないといけない。
零司「妖術ようじゅつ第弐幕だいにまく瞬殺しゅんさつつめ
俺の両手に大きな爪が現れる。そのまま、超高速で二刀流を追いかける。
すると、あっという間に目的地へ到着した。そこにいたのは、何人かけがをした『銀狼』のメンバーと、謎の武装をした連中だった。そいつらがつけている装備からは妖力が感じ取れた。俺はその姿を確認すると、妖術を解除し、物陰から様子をうかがった。
龍時りゅうじ「なんだ!お前たち」
その場に到着したばかりの二刀流使いが謎の武装をした奴らにそう聞いた。
武装者リーダー「我々はとある強大な力を欲しているだけ。そこの黒髪の女引き渡せばこのように武力行使はしていない。さあ、一緒に来てもらおうか」
こいつの説明のおかげで大体わかった。さっきから話に出ている黒髪の女。あいつは『百鬼ひゃっき勾玉まがたま 』を所持している。いや、正確には取り込んでいるのだが。そのことにこいつらは気づいている。となると、奴らは止めなければならない。だが、『銀狼』と敵対している以上、そのメンバーがほとんど集まっている状況では武装軍団だけを狙うのは難しい。あの武装軍団が規制派であるならば、『銀狼』へ協力する姿勢は少しも見せてはならない。まあ、そうなっても全員殺せばいいだけだが。となると、全員狙うしかない。『銀狼』のメンバーには手心を加えてやろう。
零司「よお、面白そうなことをしてるじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」
俺はそう言いながら、その集団のもとへ向かう。
歌恋かれん「あ、あなたは・・・」
クイーン の歌恋が怯えたような顔で俺を見る。まあ、俺が彼女にしたことを考えたら当然なのだが。この少女にかけた洗脳が解けているということは、おそらく母さんがやったんだろうが、それは別の話だ。俺は歌恋には興味のないような反応をして、武装軍団のリーダーにこう聞いた。
零司「そこの変な武装をしてるお前たち。その装備、どうやって作った?その装備から妖力が感じ取れるのだが、どういうことだ?」
威圧をかけながらそう問うと、武装軍団のリーダーらしきやつは、俺にひるむ様子もなくこう言った。
武装者リーダー「わかっているくせに、なぜそのようなことを聞く?まあいい、この装備は、妖怪を殺し、その亡骸を使って作ったんだよ」
許せない。それを聞いた時、その単語が浮かんだ。この時の俺は、『銀狼』のメンバーがいるということなど忘れて、その武装をしている奴らだけが攻撃対象になっていた。
零司「ふーん、じゃあ死ね。妖術ようじゅつ第肆幕だいしまく黒雷こくらい
俺が手を前にかざすと、その方向へ黒い雷が飛ぶ。その雷に触れたものは、体がしびれて動けない。そしてそのまま次の妖術。
零司「妖術ようじゅつ第玖幕だいきゅうまくやみ双剣技そうけんぎ
闇の剣が二本生成される。そしてその剣で黒雷が当たった奴に切りかかる。この剣は、火力が高い代わりに一度斬ったらなくなってしまう。そして運のいいことにしびれているのは二人。俺はその二人に切りかかる。
武装者A「うがっ・・・あ」
武装者B「ぐっ・・・うぁ」
二人とも簡単に倒れる。死んだかどうかは知らん。興味ない。
武装者リーダー「くそ、お前ら!撤退するぞ」
零司「俺がそれを許すとでも?俺はロイヤル・カーズのリーダー、ジョーカーだぞ。俺たちの目的の邪魔になる存在がいるなら、殺さないといけないんだ。さあ、死ね。妖術ようじゅつ第参幕 だいさんまく 絶望ぜつぼう
すると、逃げようとしていた奴らは動けなくなる。この技は、相手の動きを封じ、そいつを絶望させるというものだ。そして、俺はとどめを刺す。これを受けたら確実に死ぬ。
零司「妖術ようじゅつ幕引まくびき」
俺はその妖術を発動させながらゆっくり、武装者の集団の中心へ歩く。この時、俺の周りで黒い花びらが舞い始めた。その花びらは武装者たちに貼り付く。奴らが黒い花びらでできたミイラになるまで。
零司「黒薔薇ノ舞くろばらのまい
そして、黒いミイラたちから緑色のツタのようなものが生えてくる。そのツタは俺の足元へ集合し、茎となり、つぼみを作る。このつぼみはこの黒いミイラになった武装者たちの生命力を養分として成長する。そのため、今もつぼみがどんどん膨らんでいる。俺は生命力の探知ができる。なので奴らが死ぬタイミングを見計らって、妖術の名を呼び終える。
零司「~狂咲くるいざき~」
その瞬間。黒いバラが一輪咲いた。その瞬間、武装者たちは命を落とした。これが、死属性妖術の幕引きにして最凶の技、『黒薔薇ノ舞~狂咲~』だ。黒い花びら一枚一枚には相手の動きを抑制する力がある。そして、黒いミイラになれば、もう命はない。そして俺は、『銀狼』の連中がいたのを思い出し、この場から姿を消した。他者の命を犠牲にしなければ咲くことのできない一輪の黒薔薇を残して。

-YU`SVIEW-
私は目の前で起こったことが信じられなかった。魅守一兎みかみいちとの兄にして、魅守一狼みかみいちろう魅守霊みかみれい の実の息子。魅守零司みかみれいじの圧倒的な強さを目の当たりにし、軽い恐怖を覚えていた。それはそうとして、なぜ私がここにいたのかというと、アリサと共に『白鷺 しらさぎ 』の本部へ向かっていた。最近、一兎に「能力に依存して歩かないのはだめですよ!」と言われてしまったので、急ぎの用事でもない限りは歩いて移動をしていたのだが、まさかこんな事態に遭遇してしまうとは、姉さんの巻き込まれ体質が私にも遺伝していたのか。そんなことより、奴らはアリサを狙っているようだったが。彼女には何かがあったのか。私はもちろん戦えないので、すぐに救援を呼んだ。しかし、来てくれたのは歌恋とかがみ 君とゆきの三人で、後から龍時も来た。そして、零司が姿を消して数秒後、龍時が口を開いた。
龍時「あ、思い出した。みんな!一兎が今一人でKと戦っているんだ!相手は空を飛んでて、一兎だけじゃ無理だと思ったからみんなを呼びに来たんだった」
その言葉に歌恋も何かを思い出したかのような顔をして、
歌恋「あ、そうだった、月夜見さんにそれで呼ばれたけど逆に私が助けてほしいって言っちゃったんだった」
そう言った。それを聞いた私は、能力を発動する準備をする。
幽「はあ、龍時、それはどこだ?私が行ったことのある場所ならすぐに連れていけるが」
龍時「はい、その場所は屋敷の近くの国道で・・・」
大体の場所を教えられた私は、みんな(私とアリサを除く)をその場所へ転移させた。危険がなくなったとは言い切れないので、今回ばかりは転移を使って『白鷺』の本部へ行くことにした。
私は今回のことを受けて思ったことがある。魅守零司と魅守一兎という強すぎる存在を産むなんてあなたはどうかしてるよ。『姉さん』