第十三話 王の襲来

-ICHITO`SVIEW-
龍時りゅうじ一兎いちと!少しいいか?」
深夜しんや百鬼ひゃっき勾玉まがたまの話をした次の日、学校から帰ってきた俺は、月夜見 つくよみ さんに声をかけられた。
一兎「はい、なんですか?」
俺がそう反応すると、
龍時「一兎に、説明したいことがあって。お前が捨て駒にされているという話だ」
月夜見さんは少し申し訳なさそうな顔をして、そう告げた。それに俺は、
一兎「月夜見さんは、俺を守ろうとした側ですよね。なら、そんな申し訳なさそうな顔をする必要はないと思うんですが・・・」
と言った。しかし月夜見さんは、
龍時「いや、俺はお前にすべてを話していない。今までずっと騙していたことや、隠していたことがあるからな」
そう言って月夜見さんは深呼吸をして、
龍時「騙していたことは、俺の能力だ。俺の能力は、高速移動ではなく、時間を引き延ばす能力だ。この能力を使うことで、俺は自分以外の時間の流れを遅くすることができる。傍から見れば俺が高速移動しているように見えるだろうがな。この力は、月読尊 つくよみのみこと 様の力の一部だ」
想像以上のチート能力だった。驚きのあまり、俺は反応できずにいた。それでも月夜見さんは話を続けた。
龍時「一兎を守ろうとしたのは、月読尊様とミカエルだった。セフィラム能力は、天使に与えられる能力、ここまでは照が話したからわかってるとは思うが、お前に能力を与えたのはミカエルだ」
ミカエル。その天使が俺にこんな強い能力を与えた。ミカエルという天使が俺を守ってくれたのだ。
龍時「ミカエルは、一兎の母親にも能力を与えている。チートと呼ばれるような能力をな。そして彼女の子供を捨て駒にしようと進言したのもミカエルだ。もっとも、捨て駒にしようと言ったのは建前で、本音は自分たちの都合で余計な被害を出したくないというものだったが」
俺は、そこまで聞いて、ようやく口を開いた。
一兎「そのミカエルっていうのは、月読尊と結託していたんですよね」
その問いに月夜見さんは、
龍時「ああ、もちろんだ。そしてミカエルは、お前の母親にとあるものを託した。それが、あの白い剣。エラーブレードだ。今もあの剣の所有者はお前の母親になっているはずだ。今までエラーブレードがお前のもとに飛んできたのは、お前が呼ぶタイミングで、お前の母親が呼んだからみたいだな。エラーブレードは、所有者の呼びかけ以外には反応しないはずだし」
改めてお母さんの、すごさを思い知る。俺に存在を認知されないようにエラーブレードを呼んでいたなんて・・・
龍時「そして、次が一番伝えたいことなんだが、お前の能力は・・・」
月夜見さんがそこまで言ったところで、事件は起きた。
ドカーン!
爆発音がした。規制派の連中はこんな派手なことをしないはずなので、おそらくロイヤル・カーズだ。
一兎「多分、兄さんたちが動きましたね。話はまた今度にして、今はあいつらを止めましょう」
俺が焦ったように言うと。月夜見さんは、
龍時「ああ、わかった」
冷静に、落ちついた口調でそう言った。
そして俺たちは現場に向かう、場所は、国道沿いの住宅や店があるような場所で、幸いにもビルがたくさんあるようなところではなかった。だが、被害者が出る前に何としてでも止めなければ、そう思った俺たちは、全速力で走りだした。
一兎「おいおい、なんだよアレは!」
現場に近づくと、大きな黒い竜が見えた。
龍時「くっ、あいつに気付かれたか、攻撃が来るぞ!」
月夜見さんのその呼びかけを受けて、竜を見ると。口から炎があふれ出ている。よくあるブレス攻撃をしてくるようだ。あの攻撃を俺たちが避けようが避けまいが住宅に被害が出ることは間違いない。なので、
一兎「秘守術ひかみじゅつ天ノ道てんのみち無双神秘ノ華むそうしんぴのはな!」
俺は宝石の華を呼び出し、その華をあいての口の近くまで飛ばしてブレス攻撃を防ぐ。攻撃を防ぐだけなら、千変万化ノ結を発動させなくてもいい。あれを使ったときの反動を考えたら、この術を単体で使ったほうがいいと考えた俺は、あえて無双神秘ノ華を発動したのだ。そして俺はそのまま華で攻撃をする。
一兎「くらえ!・・・・・・ッ!」
しかし、竜の爪ではじかれた。すると、その竜は口を開き、しゃべった。
K「我が名はキング、普段は人の姿で過ごし、ロイヤル・カーズの者たちの指揮を執っているが、我が主、ジョーカー様の指示により、暴れさせてもらう」
暴れないでください迷惑なので。そう言ってやりたかったが、無駄だと思ったので、俺はそのまま戦闘をすることにした。だが、高所をとられている以上、近接攻撃は不可能、一兎玖錬いちときゅうれん でさっさと決めたかったが、近づけなければ攻撃は当たらない。そこも計算していると思われる。だが、俺には飛び道具がある。道具ではないけど。
一兎「高いところにいるからって、俺の攻撃が当たらないわけではないだろう。来い!エラーブレード!そしてくらえ、無影虚像ラストフィクサー!」
俺の斬撃が大量に増え、Kに向かって飛んでいく。しかし、
K「人型になれば簡単に避けられますよ」
人の大きさになって、斬撃を避けやがった。すると、また巨大な竜になった。ああいうタイプは本当に厄介だ。
龍時「あいつなら簡単に終わらせられると思うが・・・すまん、一兎!歌恋かれんに連絡する。少し待っていてくれ!」
そう言って、月夜見さんはどこかへ行った。そういえば、こんなに大きな騒ぎになっているのに、ゆうさんからの連絡もないし、そもそも幽さん、園上邸そのがみてい にいなかったし、他のみんなも来ない。どうしたんだろう。と、俺がみんなの心配をしていると、猛スピードでKが突撃してきた。
一兎「やっべ!」
俺はなんとかその攻撃を避けた。しかし、Kはまだ突撃をしてくる。よく見れば体に炎をまとっている。そしてスピードもどんどん上がっている。ということは、
一兎「炎狼えんろう爪痕つめあとか」
俺もよく使う妖術なのでそれはすぐに分かった。実際、もう目では追えないスピードになっている。
K「さあ、死ね!」
そう言って、Kが突撃してきたとき、俺はすでに、秘守術を変えていた。
一兎「チャージキック!」
そうして、俺の能力を込めた回し蹴りが、Kに直撃した。
K「ば、馬鹿な!そんな、あのスピードをとらえていただと!・・・・・なるほど、そういうことか」
俺の姿を見たKは納得したようだ。今の俺の背中にはたくさんの黄金のひもがマントのようになったものが装備されている。そう、秘守術ひかみじゅつ人ノ道じんのみち 決意正義ノ魂けついせいぎのたましいを発動させたのだ。この状態で絶対的超越アンパッサン を発動し、相手の行動を予測した。お母さんの未来予知よりは精度が落ちるが、それでも予測した未来はほぼ確実だ。
一兎「残念だが、お前がどう動いても無駄だぜ」
今の俺にはあいつに対して有効打はない。だが、歌恋の終焉機構ラストシステム ならば、あいつの動きを封じられる。そう思って、月夜見さんは歌恋を呼びに行ったのだろう。だが、あれから五分以上は経っているのに、歌恋どころか、月夜見さんが戻ってくる様子すらない。連絡をするだけなら、わざわざ呼びに行く必要はない。なら、なぜこんなにも遅いんだ?そう考えていたその時、
K「ならば、これで終わらせてくれる!妖術ようじゅつ第捌幕だいはちまく炎狼えんろう爪痕 つめあと 第拾幕だいじゅうまく炎竜乱舞えんりゅうらんぶ!」
無数の炎の竜をまとった黒い竜(K)が猛スピードで突撃してくる。
一兎「くっ、しまった!」
いきなりのことで、一撃目は避けられたが、そこで姿勢を崩してしまった。俺がしているのはあくまで予測。予知ではないため、次はなんの攻撃をしてくるかまではわからない。そのため、相手の行動をしっかり見ておく必要があったのに、俺はこいつのことをよく見ていなかった。そして、ついにその攻撃が俺に直撃しようとしていた・・・・・・だが、その攻撃が俺に届く前に、Kは吹っ飛ばされていた。そして俺の目の前には、炎に包まれた槍を持った金髪の女が立っていた。
てる「主人公補正じみたものがありながらこの様ですか。まあいいでしょう。これは一つ貸しにしておきますよ。かまいませんね?魅守一兎みかみいちお?」