第九話 太陽

-KAREN`SVIEW-
私は暗闇の中にいた。何もなく、誰もいない。ただ時間だけが過ぎていく。生きているのかすらわからない。それが今の私。大好きな人の顔も思い出せない。自分の存在すら思い出せない。覚えているのは自分が怪物だということ。そして、暗闇に光りが差すように声が聞こえた。
?「大丈夫、君は怪物なんかじゃない。人間だ。それは僕が保証する」
知らない声がする。なんとなく私の声に似ているような・・・?
私はその時自分の声を思い出した。
?「でも、今回助けたのは僕・・・いや、僕たちじゃなかったみたいだね」
どういうことだろうか。すると、また別の声がする。何度も聞いた声が・・・
一兎いちと歌恋かれん、一緒に帰ろう」
?「ほら、君を待ってる人がいる。だから早く戻るんだ」
謎の声にそう促され、暗闇へ手を伸ばすと、すべてを取り戻した・・・
ーICHITO`SVIEWー
零司れいじ「なんだと・・・?」
兄さんが倒れた歌恋を見て驚愕する。俺はそんな兄さんを煽るように
一兎「で?もうネタは尽きたか?」
そう言ってやった。すると、
零司「チッ、俺は撤退させてもらおう。だが、ネタならまだあるぞ。来い、大天狗おおてんぐ!」
そして、人のような鳥のような妖怪が現れた。大天狗は、大昔に死んだ妖怪だ。妖怪の中でもかなり有名な存在で日本には大天狗の伝承が残っているくらいだ。そしてなぜ蘇ったのかは、こいつを呼び出した奴のせいだ。
零司「じゃあな、一兎。生きていたならまた会おう」
そう言って兄さんは消えた。そして俺は、
一兎「くっ、ここまでか・・・」
千変万化ノ結せんぺんばんかのむすびの反動を受けていた。千変万化ノ結は、今までの秘守術ひかみじゅつ の能力をすべて引き継ぎ、増幅させる。そのため、三つある秘守術のうちの一つ、決意正義ノ魂の能力である、成長速度の上昇も増幅されている。それは、早すぎるというくらいまで増幅されているのだ。今の俺は、体が急速な成長に追いつけていないという状況だ。すると大天狗が咆哮する。
大天狗「ウウウオオアアアアアアアアアアア!」
そして大天狗が俺に攻撃を仕掛ける。俺は、攻撃を避けれそうにない。横目で月夜見つくよみ さんを見るが、月夜見さんも体がボロボロだ。兄さんにやられてのだろう。そして俺が攻撃を受ける決意をしたとき・・・!
?「燃え尽き、我が主に屈しなさい!」
初めて聞く声がした。声がするほうを見ると、琥珀色の槍を持った金髪の女性がいた。その声の主は、太陽のように眩しい光を放ちながら大天狗に攻撃をする。すると、大天狗は声を出すこともなく消滅した。
一兎「誰だ、お前?」
秘守術を解除した俺が、警戒しながら話しかける。
?「貴様ごときが話しかけるな!」
そういうと、その女は金色の炎をまとい、槍を俺に向かって構え、突撃をする。しかし、
歌恋「終焉機構ラストシステム!」
俺の体が見えない力に引っ張られる。引っ張られた先には、
一兎「歌恋!」
歌恋「ごめんね、迷惑かけて」
歌恋の表情を見る限り、もう大丈夫そうだ。そう思っていると、月夜見さんの声がした。
龍時りゅうじてる!やめろ!」
照「あなたは・・・月読尊つくよみのみことのところの龍時ですか」
どうやらこの二人は知り合いのようだ。その二人がしばらくにらみ合う。
照「邪魔をしないでくれますか?」
龍時「一兎を殺すのはお前たちの目的に反しているんじゃないか?」
月夜見さんは照と呼ばれる人物にそう言った。
照「ええ、以前まではそうでしたね。でも、今は違う。彼は想定よりも大きな力を持ってしまった。だから殺さなければこの世界が危ないのです。世界を救う存在が世界を危険にさらすなんて、本末転倒ではありませんか?なので、これ以上強くなる前に殺します」
照は、冷たくそう言い放った。その時、頭に声が響いた。
霊『一兎、体を貸してくれない?私がこの状況をどうにかする』
お母さんの声だ。俺はその声に心の中で返事をする。
一兎(いいけど、俺の体はまともに動かせる状況じゃないぞ。それでもいいなら、貸すよ)
俺がそう言うと、お母さんは、
霊『うん。大丈夫だから。ありがとう』
そして俺の意識は闇に消えた。
-REI`SVIEW-
そして、私は久しぶりに体を動かした。魂を司る能力。その能力を使えば、憑依している人の体を乗っ取ることができる。そして、この能力にはもう一つ特別な力がある。でも、その前に、
霊「終焉回路。あーあー、こんな感じかな?うん、私の声そっくりだ」
終焉回路、この能力の使い方は、一兎の中からずっと観測していたため、なんとなく使い方がわかる。なんとなくで使えるあたり、自分のすごさを思い知る。
歌恋「え・・・イチ兄?」
照「その白い髪とその声・・・まさかあなたは・・・!」
やっぱりあの子は覚えてたか。そして今の私・・・じゃなくて一兎の髪の毛が白くなっているのは気づかなかった。まあ、乗っ取りなんて初めて使ったから見た目が変わるなんて知らなかった。
霊「照ちゃん、久しぶり。いつの間にか私の決め台詞が一兎のものになってしまったくらい時間が空いてたけど、元気にしてた?」
私はそうやってちょっとふざけて言うと、今は一兎のものになってしまった私の決め台詞を数年ぶりに口にする。
霊「さあ、次の演目を、はじめよっか」