俺は、Qの仮面を壊し、Qからの反撃が来ると予測し、後ろへ下がった。すると、その仮面で隠されていた顔がどんな顔なのかが分かった。
一兎「なん、で・・・」
その顔は、一番見たかったはずなのに、一番見たくない顔だった。
一兎「歌恋・・・」
そこにいたのは、他でもない常陸歌恋の姿だった。
龍時「なん、だと・・・」
他のみんなも当然驚いている。それと同時に戦意を喪失した。
歌恋?「・・・終焉機構」
その瞬間、俺たちの体は宙に浮かんだ。
幸「これって、完全に歌恋ちゃんの能力だよな?」
幸が俺たちに尋ねる。その様子は余裕がない感じだった。もちろん、他のみんなも余裕がない。
深夜「ああ、でも、これはまずいね」
鏡がそう言うと、歌恋の顔をしたQが
歌恋?「妖術、第玖幕、八百万ノ来光!」
光を束ねた波動を俺たちに打とうとする。
一兎「くそ、秘守術、天ノ道、無双神秘ノ華!」
さすがにやばいと思った俺が秘守術を切り替え、宝石の華でその波動を防ごうとするが、今の俺の心は不安定な状態だ。使用者の想いに呼応する秘守術がその状態で発動できるはずがなく、
一兎「ああ、くそ、断華!」
地面に刺したままだった断華を呼ぶ。その刀で光の波動を断つ。
深夜「終焉機構!」
とそこで鏡が歌恋の能力を使い、宙に浮いた状態の俺たちを元に戻す。
幸「一兎!大丈夫か!」
地面に戻った俺は、座り込んだ。俺が、あいつが本当に歌恋なのか、悩んでいると。
歌恋?「苦しまずに楽に殺してあげようと思ったのに」
と、歌恋らしき奴が言った。
歌恋?「イチ兄、本当にしぶといね」
完全に歌恋の口調だった。今思えば、今までの攻撃、俺の戦闘スタイルを完全に熟知していないとかわしたり、防いだりすることはできていないはずだ。あいつが使っていた『神楽
』は予測するだけ、攻撃を防げるかどうかはそいつの戦闘スキル次第だ。でも、今回、どのように戦えばいいのか、俺たちの弱点が分かっていたような行動をしていた。とくに、『一兎玖錬
』のとき。あの技は、俺と、それを受けた水無月
、そして歌恋しかどういう技か直接は見ていないはずだ、もしかしたら隠しカメラかなんかで分かっていたのかもしえないが、映像で分析した程度じゃあ、あの技の特性は分からない。直接見ていないと、初撃がどれくらいのダメージか分からないはずだ。でもあいつは、それが分かっていたかのようにタイミングよく『逆境超越
』を使ってきた。『逆境超越』は効果が恐ろしく強い代わりに消費する妖力も半端じゃない。だからタイミングを見極めて使わないと、自分の妖力が無駄になるだけだ。そんなことを考えてしまったらもうあいつが本物の歌恋だった認めてるようなものだ。
龍時「おい!お前、本当に歌恋なのか?」
月夜見さんが声をかける。
歌恋「この顔を見てもわからないなんて、月夜見さんも、察しが悪いですね。そうですよ、私が、常陸歌恋ですよ。みんなと戦うのは正直嫌だけど、仕方がないよね、もう私は、『敵』だから」
なんで歌恋が妖怪になったのか、なんで歌恋がQなのかそんなことはもうどうでもよかった。
深夜「なんで?どうして妖怪になったんだ!」
と鏡が聞くと、
歌恋「鏡先輩こそ、いつの間に『銀狼』に入ったんですか?能力も隠してたみたいですし、何か悪いことでも考えているんですか?」
と、逆に鏡に質問をした。しかし、鏡はその質問に答えなかった。
歌恋「まあ、なんでもいいですけど、わたしは、とある人に妖力を渡されたんですよ。私は最初は拒もうとしました。でも、この腐った世界を変えるためなら、妖怪になってもいいかなって」
歌恋はそう鏡に返した。
一兎「おい、人間をやめてまで変えたかったのか」
俺が歌恋にそう聞くと、歌恋は微笑みながらこう言った。
歌恋「イチ兄、面白いことを言うんだね。私は元から人間じゃないよ。私は元から『怪物』だよ」
その言葉を聞いた瞬間、俺は察した。旅行中に何かがあったと。でもまず俺ができるのは
一兎「歌恋、お前に何があったかは知らないが、俺はお前を止めてみせるよ」
そう、歌恋を止めることしかできない。
歌恋「そう。いくらイチ兄でも手加減はしないよ」
その瞬間、俺と歌恋は同時に走り出した。
一兎「頼むよ、神剣。今の俺じゃあ、歌恋には勝てない。なら、俺に力をくれたっていいだろ!」
俺は願った。もう一振りの神剣が覚醒することを。今の俺では、歌恋には勝てない。なら、また力を覚醒させればいいだけだ。俺は右手に断華を握りしめ、歌恋に切りかかる。だが、
歌恋「妖術、第漆幕、光刻の聖剣
」
歌恋はまばゆい光を放つ剣を生成し、俺の斬撃を受け止め、押し返してくる。『逆境超越』の恩恵もあってか力が強い。能力で強化している俺の力と互角以上の力だ。それでも俺は左手を使わない。もう一振り握れるように。
もしこの世界に神様というものが存在するなら歌恋を救うための力を俺にくれたっていいじゃないか。
そう思った瞬間。
一兎「神様って本当にいるみたいだな。『神剣、遡月』」
二振り目の神剣が姿を現す。
一兎「二刀流は慣れないが、これでいける。無影虚像!」
俺は遡月を使って、斬撃をたくさん作る。
歌恋「そんな!」
歌恋がそこで驚いた表情をする。完全に予想外だったのだろう。歌恋には四方八方から斬撃が迫っている。逃げ場はない。しかし歌恋は、
歌恋「妖術、第捌幕、白蛇の戯
れ!」
自滅覚悟で攻撃をしてきた。白い蛇が大量に現れ!それが俺を蹂躙する。
一兎「ぐあぁあああああああ!」
歌恋「きゃぁあああああああ!」
俺も歌恋もお互いに大ダメージを受けた。そこで他のみんなが俺の援護をしようとする。これで気絶させて、歌恋を捕まえるという作戦だろう。だが、こんな簡単に済むはずがなかった。
龍時「歌恋。すまないがお前には一時的に眠ってもらおう」
月夜見さんが刀で気絶をさせようとした瞬間。月夜見さんの刀が折れた。
龍時「何!?」
歌恋が刀を折った。そう誰もが思っていたのだが、
?「まだ君にはやられてもらうわけにはいかないんでね」
何者かが歌恋をかばうように立っていた。
一兎「お、お前は!」
そう、これが種族戦争という名の兄弟喧嘩の始まりだった。