第四話 女王襲来

-ICHITO`SVIEW-
ゴールデンウィーク最終日、事件は起きた。
ゆう「お、おい!みんな!」
幽さんが慌てた様子で俺たちに声をかける。ちなみに、今日はゴールデンウィーク最終日ということもあって皆揃っている。いや、皆というのは違うか。一人だけいない人物がいる。
幽「歌恋かれんが、行方不明になった」
その言葉を聞いた全員が驚いた。むしろ驚かないほうがおかしい。
龍時りゅうじ「行方不明、だと?歌恋は旅行からは帰ってきたんだろう?」
月夜見つくよみさんがそう聞くと
幽「ああ、今日の朝、家を出るまではご家族も把握している。そこからは誰も知らない」
今の時間は十一時半ぐらいだ。『銀狼』は、休日は八時に集合することになっている。この時間になっても来ないから幽さんも気になったんだろう。そして歌恋の家族に聞いてみたらいつも通りの時間に出発したという話を聞いたらしい。
一兎「とりあえず、全員で手分けして探そう。俺は『燐神りんじんひとみ』で探すから、皆は自分の足で探してくれ」
俺がそう提案すると、
幽「なら、私は一兎の妖術の範囲外を能力で見てみよう。一兎が見れる範囲はどれくらいだ?」
一兎「半径三キロです」
そうして、俺たちは手分けして歌恋を探した。しかし、見つからなかった。

ゆき「おいおい、まだ見つかんねえのかよ。もう夕方だぞ」
幸が電話で愚痴をもらす。まあ、ここまで探しても見つからなかったんだ、愚痴を言いたくなる気持ちもわかる。
深夜しんや常陸ひたちさんが行きそうなところをみんなで片っ端から見たのに目撃した人すらいないなんて」
そう、目撃した人もいなかった。
アリサ「まるで神隠しだね」
とアリサが言う
一兎「神隠しに近いことが起きてるのは間違いない」
皆が電話の向こうで悩んでいるのがわかる。どうしたものかと考えていたその時。
幽「一兎!『ロイヤル・カーズ』の妖怪らしきものが現れた!」
能力で歌恋を探していた幽さんが、本来探していたわけではないものを見つけた。
一兎「場所は?」
幽「ここの近くの商店街だ。人がたくさん逃げていくところをたまたま見つけたから何があったのか探していたら建物を壊している妖怪らしきやつがいた」
幽さんが慌てて俺たちに説明する。
深夜「その商店街なら、僕と月夜見さんも近いね」
龍時「ああ」
と、深夜と月夜見さんが言うと
幸「おい、かがみ、お前の近くに俺がいるの忘れてないか?」
と、幸が言う
幽「じゃあ、一兎、龍時、深夜、あと幸。そいつが本当に奴らだとするなら危険だ。四人で行ってくれ!アリサはすぐに転移させる」
幽さんが俺たちに指示をする。
一同「了解!」
そして俺は全力で走る。『ロイヤル・カーズ』は俺と深いつながりがある。俺はそれを確信している。水無月みなづき との一件でそれを察していた。これは本当に俺の勝手な推測でしかないのだが、多分、この組織を束ねている黒幕は俺も知っている人物なのかもしれない。そう考えながら走っていると、現場に到着した。が、そこには仮面をつけた髪の長い女が月夜見さんと幸、そして鏡の三人が戦っている。
龍時「くっ、こいつ、強い」
幸「まじかよ。三人でこれかよ」
深夜「まさかここまでやるとは思って無かったな」
三人は苦戦している様子だ。そこで俺も参加する。
一兎「くらえ!」
完全に不意打ちが決まったと思ったのだが、その不意打ちは防がれた。
深夜「一兎、そいつはクイーンだ。『ロイヤル・カーズ』の幹部だ」
今の攻撃で俺に気づいた鏡が俺に教える。
一兎「なら、秘守術ひかみじゅつ人ノ道じんのみち決意正義ノ魂けついせいぎのたましい!」
秘守術を発動する。以前使ったときは余裕が無くて気づかなかったが、この秘守術を使った途端、背中に金色のひものようなものがたくさん現れ、マントのようになっていた。
龍時「一兎、そいつはかなり強い、全員で連携するぞ!」
月夜見さんがそう言うと、俺は鏡に合図をし、同時に攻撃をする。
一兎・深夜「妖術ようじゅつ幕引まくびき、終炎ノ一太刀しゅうえんのひとたち!」
同じ技なのは偶然だ。しかし、その攻撃をQは簡単にかわす。
龍時「これならどうだ!」
Qが攻撃をかわした方向には月夜見さんがいた。そして攻撃を当てた。はずだった。
龍時「何!残像、だと」
幸「月夜見さん、危ない!」
幸がいつも装備しているナイフを投げる、投げた方向には完全に月夜見さんの隙をついたQがいた。
幸「くそ、これもかわすか」
またかわした。まるで攻撃がわかっているかのような。
一兎「なるほど、そういうことか、絶対的超越アンパッサン
俺は、能力を極限まで引き出す。
一兎「お前の妖術は、光属性だろ。そして今使っているのは、妖術ようじゅつ第肆幕だいしまく神楽かぐら 。相手の攻撃を予測する技だ。でも、それは予測できるだけ、なら、その予測を上回ればいいだけだ」
今の俺は、スーパーコンピューターと同等以上の計算速度を持っている。が、そんな計算速度を持っていられるのにはさすがに限界がある。でも、その限界が来る前に終わらせればいい。
一兎「さあ、次の演目を始めようか」
俺は全力で相手に向かって走る。そして、相手の腹めがけて拳を突き出す。もちろん、そんな行動は読まれている。そしてQが俺の攻撃をかわそうとした瞬間、
一兎「お前の行動は、もうわかってるんだよ、エラーブレード!神剣しんけん断華たちばな!」
俺はエラーブレードと断華を呼び出す、二つとも、Qに攻撃をするように。
Q「!?」
その行動は予測していなかったのか、この戦いでQが初めて被弾する。
深夜「君の妖術、コピーさせてもらったよ。妖術ようじゅつかがみ第拾幕だいじゅうまく 双龍乱舞そうりゅうらんぶ!」
鏡が水と炎の龍を無数に生成し、Qに攻撃を当てまくる。おそらく、『神楽』をコピーし、Qの行動を予測したのだろう。というか、なんだよあの技、なんかかっこいいな。
深夜「一兎!今だ!」
などと俺がふざけたことを考えていると鏡が俺に声をかけてくる。確かに、これは絶好のチャンスだ。俺は手に持っていた二振りの剣を地面に突き刺す。そして、
一兎「妖力全開放ようりょくぜんかいほう!」
俺は人間の面だけを反転させる。なので能力はそのままだ。
一兎「妖術ようじゅつぜん幕引まくびき」
俺は最強の妖術を繰り出そうとする。
一兎「一兎玖錬いちときゅうれん!!」
炎属性の初撃をQに当てる。そして繰り出そうとする、相手を殺し続ける強力無慈悲な奥義を。しかしそこで俺は疑問に思った。なぜこいつは仮面をつけているのか、その瞬間
Q「妖術ようじゅつ第伍幕だいごまく逆境超越ぎゃっきょうちょうえつ
Qの傷が癒えた。この妖術は、傷を瞬時に治し、治した傷の分だけ自信を強化する妖術だ。今俺はこいつを殺す寸前までダメージを与えてしまった。せめて仮面だけでも!
一兎「くっ」
そして、Qの仮面が壊れる。