桜の花びらがすべて散ってしまった頃、俺たちはとある問題に直面していた。
幽「ふむ、どうしたものか」
非公開政府組織異能犯罪対策局戦闘班通称、『銀狼』の司令官園上幽
が、眉間にしわを寄せながら深く考え込んでいた。それもそのはず、これから一気にロイヤル・カーズとセフィラム能力規制派を壊滅まで追い込んでやろうとしているのに、奴らはまったく動きもしない。
一兎「まあ、いいじゃないですか。平和って言うことなんですから。それに、今の状況で戦闘があっても人手不足でしょう?」
そう、今はゴールデンウィーク。歌恋は家族で旅行、幸は実家へ帰省。そして、月夜見
さんも故郷へ帰っている。
アリサ「そうですよ。今ロイヤル・カーズの人が来ても、戦えるのは一兎君だけなんですから」
アリサがそう言うと、幽さんは、
幽「アリサ、ロイヤル・カーズの連中に人はいないぞ」
どうでもいいところにツッコんできた。
一兎「まあ、人か妖怪かなんてどうでもいいんですよ。今、水無月以上の実力者が来ても、俺には負け筋しかないんですから。今は休憩ってことでいいじゃないですか」
俺がそうやって説得する。
幽「そうだな。よし!」
そして、幽さんが何かを決意すると、
幽「お前たち、人員増強に努めてくれ!実力のある能力者を勧誘するんだ!」
一兎・アリサ「え?」
とんでもないことを幽さんが口にした。
-RYUJI’SVIEW-
龍時「ただいま戻りました」
?「ああ、よく帰ってきたね。早速で申し訳ないが、彼の様子はどうだい?」
このお方は俺の本当の上司だ。彼とは、俺の弟子であるあいつのことだ。
龍時「はい、彼は予想よりも早く力をつけています。秘守術も天・地・人の三つは使いこなすことができるようになっています。そして、最強の妖術も完成させました」
俺がそうやって報告すると
?「そうか、それは喜ばしいことだ。姉上たちの思い通りにはさせたくないからな」
龍時「はい!それはもちろんです」
俺は強く肯定した。なぜなら、このお方の姉と、その仲間たちが考えていることというのが
?「そうだね。大きな力を持たせ、世界の危機から救うための捨て駒しようなんて、さすがにかわいそうだしね」
そう、あいつは捨て駒。世界を救うための。
龍時「はい。絶対に彼を死なせません。月読さま」
-ICHITO’SVIEW-
一兎「はぁ、めんどくせぇ」
俺は今、街にいる。もちろん、能力者を探すためだ。
アリサ「まあ、仕方がないよ」
アリサもついてきている。そんな俺たちが向かった場所は、
一兎「能力者を探すって言うんならやっぱりここだよな」
アリサ「まあ、他に思い当たる場所がないもんね。まさか、休みの日に学校に来ることになるなんてね」
そう、俺たちが来たのは藤ノ宮
学園だ。ここなら能力者も多いし、それに、この連休の間は、セフィラム能力研究会という一番人気の部活が『セフィラム能力に触れよう!』っていう催しをやっている。それを見に来たという口実で、能力者を探すこともできる。
一兎「それじゃあ、がんばりますか」
そう言って、俺たちは強い能力者を探し始める。が、
アリサ「全然見つからないね。強そうな人」
一兎「まだ探し始めて一分も経ってないぞ。まあ、めんどくさいから、見つからなかったってことにしようかなぁ。いや、たぶんこれ監視されてるわ。よし、探そう」
そんなノリでダラダラ探していた。本当に適当に探していた。
一兎「はぁー。こんなの見つかるわけないでしょ」
もうあきらめていた。さっさと帰ってしまおうかと考えていた、その時。
?「た、たすけて・・・」
そんな声がかすかにした。その声がしたほうを見ると、男が一人の少女の腕をつかんで、引っ張っていた。
一兎「あの、すみません、聞きたいことが・・・」
俺はその少女を引っ張っている男に話しかけてみた。すると、
男「うるせぇ、なんだ?俺は今忙しいんだよ」
男は反応してくれたので、
一兎「いえ、僕、その子の先輩なんですけど、あなた、お父さんですか?」
男「ああ?そうだよ」
その少女の先輩だというのは、嘘じゃない。この子は歌恋のクラスメイトの、たしか名前は静原里歩
だったか。歌恋とも仲良くしていて、前にその子がお母さんとお父さんと一緒に買い物をしているところを目撃している。ていうか、たまたまいた歌恋と話していたから、その子の名前と一緒にいた人が両親だということは教えてもらった、だから、あの男が本物のお父さんではないということは分かっている。
一兎「いえ、先ほど、静原さんがひとりでうろちょろしていたので、大丈夫かな?と思っただけですよ」
俺はそう言って、その場を後にすると見せかけ、その男の方を見る。すると、俺に関係がバレたと思ったのか、その男は早歩きをしていた。
一兎「アリサ、全能増幅を俺にかけてくれ」
俺がそう言うと、今のやり取りを見て察してくれたアリサが、俺に能力を使う。
アリサ「頑張ってね」
一兎「ああ、歌恋の友達を傷つけようとするやつには、お仕置きが必要みたいだからな」
俺はそう言うと、妖術を使う。
一兎「妖術、第伍幕、燐神の瞳
」
この妖術は、自分の視点を上空にするというものだ。上空から敵を探したり、追跡するのには最適の妖術だ。
一兎「なるほど、仲間は三人、計四人か。そして、逃亡に使う車は・・・あれか」
そして、俺はその車のもとへ走る。この妖術を使うことで相手に気づかれることなく追跡ができるから、ありがたい。それに、車の速さなら、俺の能力で追いつくことは簡単だ。
一兎「あの車、あんな狭い所へ行くのか。まあ、大丈夫でしょ」
車が狭い路地に入ったところで俺は、車に触れる。
一兎「終焉回路」
すると、車の動きが完全に止まる。俺の能力で、車のエンジンが止まるように設定したのだ。そして、俺が車の扉を開けて、中にいた静原さんを引きずり出す。
一兎「早く逃げて!」
俺がそうやって叫ぶと、静原さんは、何も言わずに逃げて行った。
男「てめぇ、よくも俺たちの邪魔をしてくれたな」
まあ、そうなるよな。ご丁寧にサプレッサー付きの拳銃まで持ち出してきた。まあ、俺は拳銃の種類には詳しくないが、あの拳銃は俺たちの組織でもよく見る。ということは、非公開政府組織
の人間ということだ。
一兎「ようやく動き出したか、佐々木組。さあ、次の演目を始めようか」
そう言って俺は、能力を極限まで引き出して発動する。
一兎「終焉回路、絶対的超越!」
そして俺は全てを予測した、はずだった。