幽「一兎。少しいいか?」
一兎「はい!なんですか?」
朝、学校の支度をしていると、幽さんに声をかけられる。
幽「昨日言われたとおり、アリサの能力を調べてみたんだ。」
実は昨日、幽さんにあの事件の時にアリサの手から力が流れ込んだということを話し、調べてもらったのだ。
一兎「結果は?」
幽「ああ、どのような能力かは判明した。そのことを本人にも伝えておいた。」
アリサの能力がどのようなものかはなんとなく察しがつく。だが、やはり気になる。
一兎「その能力って何だったんですか?」
俺は幽さんに聞いてみた。
幽「アリサの能力、それは『触れている人のありとあらゆる力を増幅させる能力』だ。」
一兎「やっぱり・・・あの時俺の力が増幅したのはアリサのおかげだったのか・・・」
そして俺は思いつく。
一兎「じゃあ、アリサの能力名は『全能増幅』にしよう。このほうがわかりやすいでしょ。」
幽「さすがのネーミングセンスだな。私の能力にも名前を付けてくれないか?」
幽さんが申し訳なさそうに聞いてくる。
一兎「嫌です。どうせ幽さん俺のつけた名前に文句言うじゃないですか。だからもう二度と幽さんの能力に名前は付けません。」
そう、幽さんの能力に名前がないのは幽さんが俺のつけた名前に文句を言ってくるから、名前を付ける気になれないのだ。
幽「悪かったな。そんなことより、止めてしまって悪かった。早く学校へ行ってくるといい。」
一兎「はい。行ってきます。」
そういって、俺は園上邸を後にした。
-KAREN’SVIEW-
教師「セフィラム能力というのは、人間の脳の一部で・・・」
今は学校の授業中だ。藤ノ宮学園は普通科に通っていても『セフィラム』という必須科目があるので、今はその授業の真っ最中だ。
歌恋「はぁ・・・」
私は小さくため息をはいた。その理由はイチ兄だ。イチ兄の目的は両親を殺した相手への復讐だ。彼は今までそのためだけに生きてきた。
歌恋「イチ兄、死んじゃわないよね。」
授業中にこんなことを考えるのはいけないとは思っているのだが、どうしても気になってしまう。
教師「すなわち、セフィラム能力というのは人間が火事場の馬鹿力を起こす時と同じなんです。納得できますか?」
先生がなんか言ってるけど今は聞く気になれない。私の頭の中はイチ兄のことでいっぱいなのだから。今まで復讐のためだけに生きてきたイチ兄。そんな彼が復讐を終わらせてしまったらもしかしたら死んでしまうかもしれない。それだけは絶対に防がなければならない。
歌恋「イチ兄は私が守る。」
そうやって決意したとき、
教師「セフィラム能力がどんなものか気になりますよね、じゃあ、実際に見てみましょ?えっと、このクラスにいる能力者は・・・あ、常陸さん。お願いできますか?」
歌恋「ひゃ、ひゃい!」
急に声をかけられてしまった。授業に集中しないといけないのを再び思い出した。
歌恋(イチ兄、復讐のためだけに生きるのはやめてね。)
そんな直接本人に言えないようなことを心の中で考えたのだった。
-ICHITO’SVIEW-
学校が終わり、園上邸に帰ってきた。
アリサ「一兎君が復活したからみんながすごいはしゃいでたね。」
一兎「あいつらマジでうるせぇんだよ。人が一人いなくなったくらいで大げさな。」
学校を俺は数日間休んでいたので、クラスのみんなは俺を囲んで俺にいろいろ聞いてきた。
一兎「まあ、何とかごまかせたからよかったけどね。」
この前の事件は被害が大きかったので、その被害者ということでなんとかごまかせたのだ。
幽「一兎、病み上がりのお前に頼むべきではないのかもしれないが、任務だ。」
俺たちがのんびりしていると、幽さんが声をかけてきた。
一兎「みんなはまだ忙しいですから、仕方ないですよ。」
幽「ああ、すまないな。この場所で怪しい薬の取引が行われるという情報を手に入れたんだ。」
リーク情報がこの銀狼に?そして薬物の取引の阻止が任務?何か怪しい。
一兎「でも、我々は能力者の犯罪を取り締まる組織ですよ?そんな薬物なんかで動くわけが・・・」
幽「確証はないが、能力者に関わる薬らしい。よくわからないが、歌恋も同行させるから、一緒に行ってくれ!」
一兎「りょ、了解。」
俺はよくわからないまま任務へと向かった。
歌恋「ここが目的地みたいだね。」
歌恋と一緒に目的地に着いたのだが、何か嫌な予感がする。
一兎「ッ!歌恋!危ない!」
俺は歌恋に向かって攻撃が飛んできたことに気づいた。だから俺は能力を・・・
一兎「バーンフェーズ!・・・あれ?」
俺は終焉回路を発動しようとしたのになぜかバーンフェーズが発動した。
歌恋「きゃあ!」
しかし、その困惑のせいで歌恋を助けることができなかった。
一兎「くそ、終焉回路・・・・・・あれ?」
能力が使えなくなっていた。なぜだ?
?「残念だが、君の能力は使えない。」
何者かが物陰から出てくる。
J「私の名前はJ。魅守一兎、君の能力は薬によって封印した!」
一兎「な、なに?」
俺は驚いた。薬による能力の封印?そんなの、いつの間に・・・
歌恋「イチ兄!危ない!きゃああああ!」
一兎「歌恋!」
どうにかしてこの状況を打破しないと。俺のせいで歌恋が!歌恋を、『守らないと!』
一兎「秘守術、天ノ道、無双神秘ノ華」
俺の背中に宝石のような花が咲き、翼のようになる。なぜ発動できたかは知らないが、これで歌恋を守れる。
一兎「さあ、次の演目を始めようか!」