一兎「やっぱり買いだしだったか。」
歌恋「ごめんね。みんな忙しいし、手があいてるのは、私くらいしかいないから。」
今俺たちは、スーパーにいる。歌恋のお願いとは、買い出しに付き合ってほしいというものだった。
一兎「ていうか、ほかのみんなってなにしてんの?」
俺は気になったことを聞いてみる。
歌恋「この前の事件の事後処理と、能力者の保護をしてるよ。」
事後処理というのは分かる。だが、能力者の保護というのは何だろう。
歌恋「能力者の保護っていうのは、前の事件のせいで能力者が暴行をうけるっていう事例が増えたから、彼らを保護しよう、ってことになったんだ。」
考えてることが読まれた。
一兎「おまえ、よく俺が考えてることがわかったな。」
俺がそういうと、歌恋は
歌恋「イチ兄の考えてることなんて、おみとおしだよ。」
この発言に少し、キュンとしてしまった。
一兎「そ、そんなことより、今日は何にするんだ?できれば・・・」
歌恋「肉じゃがでしょ?そんなことわかってるよ。イチ兄の考えなんておみとおしだよ。」
一兎「お、おう。ありがとう。」
歌恋って人の心を読む能力あったっけ?
そんなことを考えているうちに、買い物は終わっていたのだが、
一兎「歌恋さん?もう帰るんじゃないんですか?」
買い物が終わったのに帰り道とは逆方向へ歩いているのだ。
歌恋「ああ、言い忘れてた。つぎ行く場所はイチ兄の用事だよ。」
一兎「?」
しばらく歩くと、見慣れた道に来た。
一兎「なるほど。」
そこまで来て、俺は理解した。そこは、とある人の家だった。
一兎「俺の剣の点検が終わったんだな。」
歌恋「そういうこと。」
この家は、銀狼直属の武器屋で武器を作ることを仕事としている富山草刃という男の家でもある。実は一か月前、俺の『エラーザブレード』という剣を点検に出したのだ。
一兎「富山さんなら、あの刀のことも知ってるかもな。」
この前の事件でいつの間にかにぎっていた謎の刀。彼なら知っているかもしれない。そんな期待をして、家の中に入るのだった。
一兎・歌恋「たのもー!」
草刃「いや、道場破りか!まったく。一兎たちは普通に入ってこれないのか?」
そう言う富山さんの手には、エラーザブレードがあった。
一兎「おお!その手にあるのは俺の!」
草刃「はいよ。受けとったらさっさと帰ってくれ!」
富山さんが俺たちを帰らせようとする。
一兎「ちょっと待ってくれ!見てほしい刀があるんだ。」
そう言って俺はこの前の感覚を思い出し、あの刀を顕現させる。
草刃「なんだ?その立派な刀は」
歌恋「イチ兄、いつの間にそんな能力を」
二人が驚きながら俺の刀を見る。
一兎「気が付いたら使えるようになってた。俺もよくわからないんだよ。」
草刃「そうか・・・ちょっと見せてくれ。」
俺は富山さんに刀をわたす。
草刃「んー?この刀の銘は・・・断華というのか・・・?断華!?」
一人でぶつぶつしゃべって、一人で驚いた富山さんが、俺たちに説明する。
草刃「この刀は、神剣 断華という刀だ。」
その言葉に、俺は驚くことしかできなかった。
草刃「そして、この刀のほかにも二振りの刀がある。その刀が強いほうから、赫飛車、遡月
というのがある。その刀たちは宿主を決め、三振り一緒に宿る。あつかうには、それ相応の力が必要だけどな。」
話が長いのがこの男の特徴だ。しかし、今回はいつもより短い。
一兎「ようするに、強くなれば他の刀も使えるようになるってことか?」
草刃「そういうこと。ほかの刀も使えるようになったら、見せに来てくれ。」
そう約束して、俺たちは富山さんの家をあとにした。
歌恋「イチ兄がどんどん強くなってるよね・・・」
少しさびしそうに歌恋が言う。
一兎「復讐のために強くなるなんて、ほめられたことじゃないよ。」
歌恋「・・・・・・」
なにかに気づいた様子の歌恋が、黙りこんでしまった。俺はそのことが気になったが、彼女に聞くのは難しそうだった。その後で食べた肉じゃがは、いつもより味気なかった。