第九話 目覚めし虚像

-ARISA’SVIEW-
私は目の前で起こった出来事に、驚くことしかできなかった。その理由は、さっきまで敵を圧倒していた一兎いちと君が、落雷によって倒されてしまったからだ。
アリサ「一体だれが・・・こんなにタイミングよく雷が落ちてくるわけがない・・・ッ!」
すると前方に人影が急に現れる。
?「さすがにまだ死んでないよな?第参幕だいさんまくの妖術をぶつけたはずなんだけど、しぶといね、君」
一兎「だれだ、おまえ」
何とかして立ち上がる一兎君。
エース「俺の名前はAとでも名のっておこうか。てか、そんなこと気にしてる場合か?」
そういうと、Aは攻撃を出そうとする。
一兎「気にして悪いか?妖術ようじゅつ第玖幕だいきゅうまく、」
一兎君は私をかばうようにかまえる。
A「その状態で俺に勝つつもりか?妖術ようじゅつ、第玖幕、」
使う妖術のレベルは、二人とも同じだけど、このままだと一兎君が負けてしまう。
A「悲雷槍ひらいそう!」
一兎「火具土命ノ憤怒かぐづちのふんど
一兎君の技は、炎の壁で攻撃を防ごうとするものだが、Aの技は雷の槍。誰かが助けに来てくれることはなさそうだ。悔しい。何が悔しいって目の前にいる人はピンチなのに、一番近くにいる私が何もできないってのが悔しい。そう思った私の体は、無意識の内に一兎君の体を支えに行った。

-ICHITO’SVIEW-
俺がAの攻撃を防いでいる最中に、後ろから、手のようなものの感触がした。後ろを確認するとそこには、
一兎「アリサ!?」
なにをしているんだを聞こうとしたが、それよりも別のことが気になった。アリサの手から、力が流れこんできたのだ。
一兎(力の増幅か?でも、これなら・・・)
すると、雷と炎がはじけ、爆発した。
しかし、俺たちへの影響はなかった。
A「馬鹿な・・・それに、なんだよ。それ。」
Aは目を見開いた。とうぜんだ。俺の背中に、漆黒の翼が生えているのだから。
一兎「妖力全開放ようりょくぜんかいほう
妖力全開放とは、俺の妖怪としての力を、最大まで引き出し、自身の姿も一部妖怪の姿に変えるというものだったA「くそ!妖術、第伍幕だいごまく雷障らいしょう !」
慌てているせいで雷妖術特有の遠距離攻撃が当たらない
一兎「今ならあれがまた使えるかも・・・」
力が欲しい。その想いがいま、覚醒した俺の中で大きくなる。
一兎「秘守術ひかみじゅつ地ノ道ちのみち虚無破滅の影きょむはめつのかげ
以前とは違い、今回は左右に三本ずつ黒い羽根が生える。今の俺が、妖怪だからだろう。そのため、今の俺のセフィラム能力は、終焉回路ラストプログラムじゃない。正確には、変化したのだ。
A「それが秘守術か。でも俺はおまえを倒してみせる!絶対に!」
Aが全力で突進してくる。しかし、俺は無意識のうちに握っていた刀で応戦する・・・?
一兎(なんだ?この刀。いつのまににぎっていたんだ?まったく理解ができない。ただ、この刀からは、俺の妖力と謎の神力が感じとれるということだけだ。
A「妖術、第拾幕だいじゅうまく轟音激雷ごうおんげきらい
無限ともいえるほどの雷の矢が、俺をおそう。
一兎「使えるものは利用すればいいだろう」
俺は謎の刀を使い、雷を斬る。
A「クソ!こんどこそ!」
Aはもう冷静さを欠いている。
A「うぉおおおお!妖術、幕引きまくびき轟迅爆雷ごうじんげきらい!」
落雷が永遠に続く。だが、こちらは無限だ。
一兎「無影虚像ラストフィクサー。」
俺の二つ目の能力。妖力を開放している時のみ使える技。無数の斬撃で、雷を斬る。無影虚像は、実態のある虚像を作り出す。大きさも、数も、自由自在に設定できる。
一兎「これで終わりだ。妖術、幕引きまくびき終炎ノ一太刀しゅうえんのひとたち
巨大な炎の刀がAにおそいかかる。
A「あぶねぇ!なんとかよけれた・・・・・・ッ!」
なんとかかわしたAの顔が、絶望に染まる。
一兎「乱世らんせ無影虚像ラストフィクサー
時間差で炎の斬撃が大量に降り注ぐ。

-ANOTHERWIEW-
A「ぐぁあああああ!」
無数の斬撃でAが倒れる。
?「あーあ、負けちゃったか・・・ま、予想はしてたけどね。にしても一兎君の【秘密】はボクの思ってたとおりだったか・・・」
ボクは遠くから一兎君を見る。
?「やっかいな【秘密】だなぁ。手を打たないとね。」
ボクの【秘密】は、一兎君にはバレてはならない。そう、このボク、ジャックの【秘密】だけは・・・