一兎「君、大丈夫?」
俺は檻の中にいた女の子に話しかける。
女の子「は、はい。あの、あなたは?」
一兎「俺は魅守一兎だ。君を助けに来たんだ。」
女の子「わ、私は花咲アリサとあの、一兎さんは人間じゃ、ないん、ですか?」
そこで俺は気づく。秘守術を解除していないことに。
一兎「ああ、ごめん。こんな姿じゃ警戒しちゃうよね。じゃあ、能力を解除しー?」
能力を解除した途端、目の前が真っ暗になり、俺は気絶してしまった。
-ARISA’SVIEW-
目の前にいた真っ黒な人は、大きな黒い爪のようなものを消した途端、倒れてしまった。
アリサ「一兎さん?大丈夫ですか?」
脈はあるから、死んではいないはずだけど、私は考えた。私を助けるために無茶をしたのではないか、と。
アリサ「一兎さん、ごめんなさい。」
龍時「一兎!大丈夫か?」
多分、一兎さんの仲間だろう。一兎さんを心配する声が聞こえた。
龍時「一兎!」
アリサ「あ、あの、脈はあったので、生きてると思いますよ。」
一兎さんを見つけた男の人は一兎さんのもとに駆け寄ってきたので、一応生きているということを伝えた。
龍時「そうか、よかった。あ、そうだ。君のことも助けに来たんだった。今から能力によるテレポートがある。そして安全なところまで連れていったあとで、今回の件の説明をする。それが終わったら、家に帰ってもいいよ。」
家?あれ、家ってどこだっけ?ていうか、今までどこで暮らしてたっけ?思い出せない。
アリサ「あ、あの。」
龍時「なんだ?今は説明している暇がー」
アリサ「私、今までの記憶がほとんど無くて、家とか思い出せないんですけど・・・」
龍時「?」
-ICHITO’SVIEW-
目が覚めると、そこは見覚えのある空間だった。
一兎「・・・園上邸」
園上邸とは、『銀狼
』の班長である園上幽さんの家で、『銀狼』のメンバーが大怪我をした場合、ここで療養することになる。大けがをした状態で病院に行けば、組織の情報が漏れてしまう可能性があるため、ここに搬送されるのだ。
???「あらぁ、目が覚めちゃった?」
俺が一番苦手な人が出てきた。
一兎「俺が寝てる間に変なことをしてないですよね。水無月先生。」
透「残念だけど、僕は無防備な子に手を出したりしないから、安心して!」
こいつは水無月透
、俺たち『銀狼』の所属している人間の一人だ。こいつは女には興味がなく、男を恋愛対象としてみている。口癖は「女と恋愛なんて、邪道だよ!」だ。意味が分からん。
一兎「じゃあ、あなたに聞きたいことは一つだけ、もう動いていい?」
透「退院は三年後、つまり僕と結婚できるようになってからです。」
水無月先生がこういう時は退院してもいいということだ。じゃあ、ベットから出よう。まず状況を確認しないと。
透「一兎君?あ!また嘘を見破ったね?この世には見破っていい嘘と見破っちゃいけない嘘がー」
なんか言ってるが気にしないでおこう。
一兎「幽さん、入ってもいいですか?」
幽「一兎?目覚めたのか。入ってきていいぞ。話したいことがある。」
話したいこととは何だろう。ちなみに俺は家がないのでこの園上邸に住んでいる。ここに住んでいるのは、幽さん、月夜見さんなどの『銀狼』の一部の人間しか住んでいない。しかし、
一兎「失礼しま・・・す!?」
いるはずのない人間がそこにいた。
幽「ああ、一兎。先日君が助けた女の子、花咲アリサはここで私たちと一緒に暮らすことになった。」
アリサ「一兎さん、先日は助けてくださってありがとうございました。一兎さんが三日も目を覚まさなかったときは少し不安になりましたが、お目覚めになってよかったです。.」
そう、そこにはこの前の連続誘拐事件の時に助けた少女がいた。
一兎「なんで君がここに?花咲さんはここの組織の人間じゃないでしょ?」
幽「そのことに関しては私が説明しよう。アリサはどうやら誘拐事件のときのショックで記憶喪失になったらしくてな、戸籍を探してみたんだが、花咲アリサという人物が見つからなかった。そのため、今回は特別にうちで保護することになった。戸籍はとりあえずごまかしたものを使っている。一兎のときみたいだな。でも、アリサは妖怪でも何でもない人間だ。謎は多いが、これからは家族のようなものだ。仲良くしろよ。」
一兎「は、はい。」
聞きたいこと全部言われちゃったな。それにしても戸籍がない、か。
一兎「花咲さん、これからよろー」
アリサ「一兎さん、私のことは下の名前で呼び捨てにして下さい!」
一兎「はい、すみません。じゃあ、アリサ、これからよろしく。あと、俺に敬語を使うのはやめてくれ。」
アリサ「え?じゃ、じゃあ、分かった。一兎君、これからよろしくね。」
なにこれラノベとかのテンプレじゃん。
幽「じゃあ、顔合わせも終わったし、本題に入ろう。一兎、あの力は以前お前が言っていた秘守術なのか?前は使えないと言っていたが・・・」
一兎「秘守術なのは間違いないのですが、あの時は火事場の馬鹿力が出たみたいで、やっぱりもっと練習しないと使えないみたいです。」
幽「そ、そうか。だが、物心ついた時にはもう特訓していたのだろう?ならもう使えてもおかしくはないと思うが・・・」
一兎「すみません。あの技は本当に難しいんです。なので今日も練習したいんですが・・・」
幽「今日はダメだ。病み上がりだからな。その代わり、お前に頼みたいことがある。」
一兎「?」