第十八話 馬の耳に念仏

-ICHITO'SVIEW-
一兎いちと「ついに来たか、この日が」
水無月透みなづきとおるを倒す日、それが今日だ。ちなみに、例の妖術はまだ完成していない。
ゆう「気をつけろよ。お前たちを死なせたくないからな」
幽さんがそう言ったとき、間髪入れずに月夜見つくよみさんが
龍時りゅうじ「特に一兎。死ぬなよ。絶対に」
と、釘を刺されてしまった。
歌恋かれん「大丈夫です。私が意地でも死なせませんから」
歌恋が自信満々に言う。が、その声は震えているように聞こえた。
一兎「それじゃあ、行こうか」
だが、俺はあえてそのことに触れなかった。そして、戦場へ行くのだった。

-ANOTHERVIEW-
?「とうとう始まったか、決戦が」
一兎と歌恋ちゃんが戦うと予想しているが、正直、あの二人でも勝てる見込みがない。
僕「僕の合わせ鏡の夜ミッドナイトミラーを駆使しても勝てるか怪しいのに、あの二人が勝てるのかな?まあ、僕にできるのは敵の戦力を減らすことだけ。なら、やるしかないか」
そう言って、僕は二人の後をつけて、水無月透が居る場所へ向かった。

敵A「なんだ?おまえ、てっきりあの灼熱の半妖が来るかとおもったんだがなあ」
到着したので、僕は別の場所から侵入した。するとさっそく敵が現れた。
敵A「ふん、これでもくらえ!妖術ようじゅつ第一幕だいいちまく氷華ひょうか!」
氷の花のようなものがこちらへ向かってくる。しかし、
僕「妖術ようじゅつ第一幕だいいちまく鬼火おにび
一兎の妖術をコピーし、それを放つ。
敵A「なんだと!ぐぁああああ!」
氷は一瞬で溶けて、炎はそのまま貫通し、敵に当たる。
僕「まあ、簡単な作業だな」
僕が油断していると思ったのか、背後から岩が飛んでくる。まあ、油断してないんだけど、
僕「終焉回路ラストプログラム!」
これも一兎の能力だ。ていうか、僕が言うのもなんだけど、あいつ、万能すぎないか?まあ、そんな万能すぎる能力を使い、自身の体をダイヤモンドくらいまで硬くする。
敵B「なに!その能力は魅守一兎みかみいちとの!」
まあ、気づいたところで結果は変わらない。
僕「さっさと消えてくれるかな。妖術ようじゅつ第伍幕だいごまく雷障らいしょう
蜘蛛くもの巣状の雷を飛ばして、敵を倒した。
敵B「ぐあああああああああ!」
そして僕は奥へ進む。暴れ馬の如く。すると、門番みたいなのがいて、
門番「ほお、魅守一兎が来たわけじゃないんですね。まあ、いいですけど」
僕「一兎たちならもうしばらく来ないよ。今、作戦を確認している最中だろうから」
これは嘘ではない。アリサも一緒に来ていたので、こっそり移動して、水無月との戦闘の直前に能力を増幅するのだろう。そのため、もう少し時間が掛かるはずだ、それまでにこいつを倒せば僕の役目は終わりだ。
門番「ここまで来たということは、戦うということでいいんですね。妖術ようじゅつだい漆幕しちまく 風鈴ふうりん
リン
そんな音がしたと思ったら、相手の姿が消えていた。瞬間移動の類か。
僕「妖術ようじゅつだい陸幕ろくまく火竜巻ほのたつまき
炎の竜巻を盾にして攻撃を防ごうとする。しかし、
門番「妖術ようじゅつ第伍幕だいごまく風刃ふうじん
風の刃が僕に襲い掛かる。その行動を予測できなかった僕は攻撃を受けてしまう。はずだった。
門番「な、馬鹿な!」
あの門番が驚いている。それもそうだ、自分の放った攻撃が消えているのだから。
僕「これに関してはネタバラシをしてあげるよ。僕の能力は見知った技や能力をコピーするというものだ。まねをするようなもんだ。コピーをするだけだから、妖術を使うときも、妖力を使わない。そんなに使い勝手がいいなら、別々の技同士を合わせることだってできる。今回は、火竜巻と、氷華を合わせて、炎に当たったものをなんであろうと凍らせた」
門番「そ、そんなの、ずるくないですか?」
門番がふとそんなことを言う。
僕「ずるくないさ、こんな世界じゃあ、能力が強く、その能力を使いこなしている人が強いんだ。こんなくそったれな世界だからな、それが普通なんだ。僕を倒したいなら、死ぬ気で来ないとだめだよ」
僕がそうやって言うと門番は僕をにらみ、
門番「うおおおおおおお!妖術ようじゅつ第拾幕だいじゅうまくふうじん 乱舞らんぶ!!」
風をまとい、暴れた。がむしゃらな攻撃なら、隙は大きい。だから、その隙をつける攻撃をしようと思った時、
門番「まだまだぁ!妖術ようじゅつ幕引きまくびき!」
僕「幕引きだと!」
幕引きをその状態で打てるのか、これがこいつの本気か。
門番「龍円召嵐りゅうえんしょうらん!」
とてつもない威力の嵐が吹く、それが僕に当たりそうになった時、僕は、炎の妖術と水の妖術のそれぞれの第拾幕だいじゅうまく を組み合わせようとした。炎龍乱舞と水龍乱舞。対の存在である二対の龍が今、目覚める!
僕「妖術ようじゅつかがみ第拾幕だいじゅうまく双龍乱舞そうりゅうらんぶ !」
炎と水の龍が暴れる。ひたすら暴れる。もう誰も逃げることはできない。
僕「君の攻撃はまさに、馬の耳に念仏、だよ」
門番は、悲鳴を上げることもなく、倒れた。
僕「さて、こいつをどこかに隠しておこう、一兎たちに見つかっても面倒だ」

-ICHITO'SVIEW-
一兎「この扉のさきにいるのか」
俺たちは水無月がいるであろう扉の前についた。
アリサ「一兎君、歌恋ちゃん、はい」
そう言うと、アリサの手が俺と歌恋に触れ、能力を発動させる。
歌恋「ありがとうございます。花咲先輩。よし、僕たちで、水無月を倒そう!」
ん?今、歌恋の一人称がおかしかったような・・・
一兎「歌恋、今、お前自分のこと、『僕』って言わなかったか?」
俺がそう聞くと、歌恋は
歌恋「?何言ってるの?私の一人称は『私』だよ」
歌恋がそう言うと、俺とアリサはお互いの顔を見て、互いに首を傾げた。