第十四話 ただそれだけの事実

-ANOTHERVIEW-
?「妖術ようじゅつ第参幕だいさんまく常闇とこやみ
魅守一兎みかみいちとと、常陸歌恋ひたちかれん をたまたま見かけたので、後を追ってみると、二人がピンチだった。しかも二人の付近には、セフィラム能力を寄せ付けない結界みたいなのがあった。
?「にしても、あの妖怪。ジャックだったっけ?さすがに僕も勝てる気がしないなぁ」
そう、あの男は本当に強い。僕の能力、『合わせ鏡の夜ミッドナイトミラー』でも、勝てなさそうだ。

-ICHITO'SVIEW-
一兎「はぁはぁ、ゆうさん!歌恋の手当てを!」
俺は死に物狂いで走ってきた。普通の人間では目視できないほどの速さで
幽「あ、ああ、医療メンバーをすぐに呼ぼう!」
そういうと、幽さんは電話をかけた。用事があったせいで今はこの家にいない彼に
幽「とおる!歌恋と一兎が任務で怪我を負った!すぐに来てくれ!」
俺はその会話を聞いて、何かが引っかかったような気がした。
一兎「幽さん、あの時僕らを離脱させようと思えばできましたよね?なんで離脱させなかったんですか?」
俺は気になったことを聞いてみた。
幽「ああ、なぜか知らんが、空間をつなげようとしたのに能力が発動できなかったんだ」
一兎「やっぱり・・・」
俺は戦ってる最中、謎の結界の中にいるような感覚がした。おそらく、その結界のせいだ。
一兎「終焉回路ラストプログラム
俺は能力を発動させようとするが、何も起こらない。
一兎「薬のせいで能力が使えないのは本当みたいだ」
あの結界は外部からの干渉を断つようなもなのか?だが、そうなるとあの時助けてくれたやつはどうやって?
幽「一兎!回復系の能力者は今いるか?」
一兎「え?わ、わかりません。探してきます!」
俺は考察するのをやめた。

次の日、俺たちは、回復系能力者のメンバーのおかげで、完治した・・・とはいいがたいが、外傷はないので、学校に行くことにした。
アリサ「一兎君、大丈夫?」
一兎「あ、ああ。だが本当に何かが引っかかる」
俺はあの後ずっと考えていたんだが、何も進展がなかった。そのせいで寝不足だ。
アリサ「まあ、歌恋ちゃんも学校に行けるぐらいには元気なんだし、今心配することじゃないと思うよ?そんなふうに眉間にしわを寄せてると、怖い人だと思われちゃうし。何より歌恋ちゃんが心配するよ」
一兎「そうだな、学校の時ぐらい、任務のことは忘れてもいいかもしれんな」
俺たちはそのまま話しながら教室へと向かう。
一兎「おはよう」
俺はそういいながら教室の中に入り、自分の席に向かう。
一兎「はぁ」
そして椅子に座ると同時にため息をついた。
一兎「考えるなって言われても、やっぱり考えちゃうな」
そんなことを口に出した時、
深夜しんや「何か考え事かい?」
かがみ深夜しんやが話しかけてきた。
一兎「お前には関係ないことさ。ちょっとうまくいかないことがあったんだが、これは相談できない話だな」
深夜「そうか、だがあまり自分だけで抱え込むなよ」
鏡は面倒見のいい奴だ、困っている人がいたら見逃せない。そういう奴だ。
一兎「忠告どうも、でも俺には頼れる仲間がいるからな、そこは気にしなくても大丈夫だ」
俺がそう言うと、鏡は微笑み、
深夜「常陸さんのこと?」
一兎「んー?どうしてそう思ったのか聞きたいんですが・・・」
そう聞き返した俺の言葉を無視した鏡が、
深夜「あーごめんごめん。常陸さんは大切なパートナーだもんね」
一兎「あのー深夜さん?それだと誤解を招きかねないんですけど・・・」
ようやく俺の言葉に反応してくれたかと思ったら、
深夜「一兎君は何を言ってるんだい?常陸さんの想いに気づいてあげなよ。彼女は多分君のことを・・・」
とそこで鏡が口を閉じる。
深夜「やっぱりやめた、これ以上は常陸さんのほうがかわいそうだからね」
一兎「俺はどうでもいいかよ!」
俺がそう言うと、鏡は笑って、
深夜「ごめんって!それと僕の方から一つ言わせてもらうと、探し求めている答えは、遠くにあるように見えて、実は近くにあったりするもんだよ」
俺はその言葉を聞いたとき、引っかかっていたものがなくなりそうな気がした。
一兎「案外近くに・・・」
そうして俺は考える。俺の中で引っかかっていたキーワードをつなげてみる。
『能力を封じる薬』『幽さんの能力を封じた結界』
この二つの共通点。それは、俺たちの能力が露見しているということ。
『能力を封じる薬』この薬を俺に打ち込んだタイミングはいつだ?薬なんて打ち込んだら俺が気づかないはずがない。となると、自然なタイミングで俺に打ち込んだ?自然なタイミング・・・
そういえば俺はついこの間まで寝たきりの状態だったんだよな。血気けっき開放かいほうを使って貧血を起こして、血液投与をしてもらって・・・?
一兎「そのタイミングだとすれば・・・」
あの人しかいない、確かあの人は昨日いなかった。
一兎「そうか、そういうことか」
俺はすべて理解した。もうあいつしかいない。事実をそのまま並べれば簡単に答えが出てきた。
そう、ただそれだけのことだったんだ。

昼休み、俺は歌恋を誘って昼食をとることにした。
一兎「歌恋~!いるか~?」
歌恋「イチ兄!どうしたの?」
歌恋がパタパタと駆け寄ってくる。
一兎「少し話したいことがあるんだ。一緒に飯を食わないか?」
歌恋「いいよ。それなら屋上のほうがいい?」
一兎「ああ、そのほうがいいな」
そういって俺たちは屋上へ行く。
歌恋「やっぱり屋上には誰もいないね。で?話って何?」
一兎「ああ、話ってのはな、ジャックの正体がわかったんだ」
俺がそういうと、歌恋が目を見開いた。
歌恋「え?ほんとうに?てことは私たちが知ってる人?」
歌恋が俺に前のめりになりながら聞いてくる。
一兎「ああ、Jの正体、それは、『水無月透みなづきとおる』だ」