第四話 最速×最恐

龍時りゅうじ「ここがやつらの潜伏場所だ。一兎、準備はいいな?」
一兎いちと「はい、こっちはいつでもオーケーです」

一週間前から俺たち銀狼ぎんろう は、連続誘拐事件を追っていた。誘拐対象はセフィラム反応、つまり能力の反応がある者だ。セフィラム反応は、能力者の発見から二年後くらいに発見された能力者特有の反応で今では能力者の反応があるかどうかなどは、簡単に調べられる。その反応の強さによって能力の強さが決まると言われているので、今回誘拐されたのはみんな反応が強かった人たちだろう。反応が強ければ、実験するときに、一番変化がみられるからな。実験と言っても非人道的なものだろうが。
そしてここはその誘拐犯のアジト。外見は大きくて古い倉庫だ。そして俺たちは突入準備をする。
龍時「突入まで、三、二、一、GO!」
その合図で突入する。
誘拐犯A「な、なんだ?・・・ぐふっ!」
誘拐犯B「敵襲!敵襲だ!」
そんな風にギャアギャア叫んでるだけだから、俺たち師弟コンビには敵うはずもなく、
一兎「ここら辺は一掃できましたね」
一掃した。俺がそう月夜見さんに報告すると、
龍時「ああ、司令官!被害者はどこにいる?」
月夜見さんはすぐに幽さんに確認をとる。幽さんの能力は、一度行ったことのある場所という範囲だけではなく、半径一キロまでなら、行ったことがなくても能力が使える。なので、今は倉庫の前で幽さんが待機している。
ゆう「そこから奥のほうまでまっすぐ行ったところだ」
幽さんがそう言うと、俺たちはすぐにそこへ向かった。
龍時「よし、一兎、行くぞ!」
一兎「はい!」
幽さんが能力を使って道案内をしてくれるので、救出の作業が一段と楽になる。
被害者と思われる人たちが捕まっている牢屋を見つけた。ていうか、わざわざ倉庫のなかにこんな牢屋を作ったのか・・・少し引いた。
龍時「これで全員か?」
牢屋の中にいる人がいなくなって、月夜見さんがそう言った。しかし、
被害者「あ、あの。あと一人あっちの奥のほうへ連れてかれたっきり帰ってこないんです・・・」
被害者の一人がそう言った。それを聞いた月夜見さんは慌てた様子で、
龍時「何っ、一兎!お前がいってこい!この人たちは俺が安全な所へ連れていく!」
俺にこの先のことを頼んだ。任されたら互いに動くのが俺たちの師弟関係。なので、
一兎「わかりました。そっちは任せました!」
俺たち最速×最恐の師弟コンビは信頼関係も抜群なのである。
一兎「ここら辺が最深部なのかな?」
俺が探索を初めて約二十秒ようやく檻のようなものが見えた。その中にいたのは・・・
一兎「・・・・・・」
服装は、先ほどの被害者たちよりボロボロだが、艶やかな長く黒い髪、透き通った水晶のような双眸そうぼう 、その反則的な美しさに一兎は一瞬ではあるものの、目を奪われてしまった。しかし、なぜか一兎は違和感を覚えた。どこか悲しみを覚えるような感覚が。しかし呆けてはいられないので俺はその子に声をかける。
一兎「君、大丈夫か?すぐに助けて・・・ッ!」
俺は後ろから迫る殺気に気が付きとっさに能力を発動、その効果は体をダイヤモンドと同等の硬さにするというものにした。よけるという選択肢を選べば、飛び道具が飛んできたときにこの少女に攻撃が当たる可能性があったからだ。しかしその行動の意味はたいしてなく、耳に強烈な痛みが走った。
主犯「俺の部下たちをずいぶんと可愛がってくれたみてぇだな?お前には痛い目に合ってもらうぞ?って言ってももう頭がぐしゃぐしゃで訳が分かんねぇだろうがな」
たしかに、頭痛もするし、体もだるい。なんだったら関節痛もする。だが、ダメージはあまりなかった。相手の能力と、自分に何が起こったのか、それをすぐに理解できたのがよかった。
一兎「なるほど、お前の能力は気圧の操作か。どおりで硬化能力じゃ防げないわけだ」
俺は体の異変を感じている。自律神経が乱れている。でも、気圧の仕組みさえ分かっていれば、こんな能力どうにでもなる。
一兎「いや、俺は動けるぜ、車より速く走れそうなくらいしっかり動けるぜ」