日本、S県、藤ノ宮市、
これは、まだ高校二年生になったばかりのとある青年の物語である。
一兎「チャージ・キック!」
敵「ぐぁあ!!」
一兎「対象の確保完了」
幽「了解。ご苦労だった。本部に帰還しろ」
俺は魅守一兎、非公開政府組織、異能犯罪対策局戦闘班、通称『銀狼』に所属している能力者だ。この世界には、能力がある。その能力は二十五年前、突如現れたいわゆる超能力というやつだ。
人々はその能力を『セフィラム能力』と名付けた。この、セフィラム能力は人々に便利な暮らしを与える一方、その力で犯罪を犯す者もいる。
その犯罪者に対応すべく創られた組織が、この『銀狼』だ。そしてこの組織を引っ張っているのが、この組織の発起人、園上幽
だ。年齢は二十五歳。ちなみにこの組織を作ったのは七年前、幽さんが十八歳の時だ。高校卒業と同時にこの組織を創った。
この男の能力は、「空間に干渉する能力」
しかしこの能力は、そこまで大きな力は出せない。
できても短時間の重力操作、テレポートくらいだ。でもこの力のおかげで幽さんは俺たちの様子を確認し、指示を送ることができる。
彼の情報処理能力は本物だ。組織のみんなが頼りにしてる。
俺は、たまたま町で暴れてるセフィラム使いを倒したときに、その一部始終を見ていた幽さんにスカウトされた。
その時の能力者は、なかなか強いやつだったらしいが、俺が一分もかからずに倒したことにすごく驚いていた。
そんな俺の能力は、「自身と自身が触れている物の設定をいじる能力」だ。
長いから、終焉回路と、名付けた。
終焉回路は、汎用性が高く、木刀を真剣と同じくらい固くすることもできるし、自分の身体能力を引き上げることもできる。
この能力のおかげで、対物ライフルくらいなら防具無しで耐えることができる。組織の中だと、最強能力者とも言われているが、能力だけだ。戦闘は能力だけじゃ、切り抜けられない。
龍時「一兎、帰ったら鍛錬の続きをするか?」
今、通話で俺に話しかけたのが、師匠の月夜見龍時だ。さすがの俺もこの人には勝てない。
彼の能力は「高速移動する能力」だ。でもこの男の反応速度は、人間離れしている。つまり、能力との相性が良すぎるのだ。
故に誰も勝てない。世界最強の人間とまで言われるくらいだ。そんな人の弟子である俺は、こう答えた。
一兎「わかりました。でも、その前に事件の後処理をしないと。報告書を書くのめんどくさいなぁ」
すると幽さんが、
幽「めんどくさいとか言ってると、『白鷺』の連中にまた文句を言われるぞ」
と言ってきた。『白鷺』というのは、異能犯罪対策局情報班の通称名である。『銀狼』が現場に立ち、制圧や護衛任務などをする一方で、『白鷺』は情報を隠蔽したり、盗んだり、主にそういったことをしている。スパイのような感じだ。能力者関連の犯罪情報などは、彼らが俺たちに提供している。明らかにやばそうな組織ではあるが、闇に紛れて悪を討つといった感じでかっこいいと俺は思っている。異能犯罪対策局自体は、どちらも幽さんが発起人ではあるが、これが非公開政府組織になったのは、とある政治家の助力のおかげだ。しかし、それはまた別のお話。
一兎「わかってますよ。仕事はちゃんとやります」
俺は、幽さんにそう言った。めんどくさいのは確かだが、仕事はちゃんとやらなければならない。すると月夜見さんが、軽く笑いながら、
龍時「初めて報告書を書いたときは『白鷺』の連中にしっかり怒られたもんな」
と言われたので俺は、
一兎「そうですよ!ひどくないですか?始めてやったのにまるで俺がいつも同じようなミスをしているかのような言い方をしてきたし。俺、あの人たちに嫌われてますか?」
少々キレ気味で言った。あの時は俺をいじめてるんじゃないかと勘違いするほどだった。
龍時「まあ、あいつら、何気に厳しいからなぁ。でもさすがにあれはやりすぎだよなぁ」
月夜見さんも、俺の意見には賛成してくれているようだった。
幽「まあ、二人とも、雑談はこのくらいにしてくれないか?これ、仕事用の通話回線なんだから」
そんな感じで幽さんに会話を止められた。幽さんは続けて俺に話す。
幽「さて、一兎は私の能力でさっさと帰還してもらう。そのあとで次の任務について説明する」
そう言われて、俺は幽さんに質問をした。
一兎「次の任務?もうあるんですか?いや、まあ、急に頼まれるよりはマシですけど、さすがに間隔が短いと思うんですが・・・あ、ごめんなさい。別に反抗しているわけではなくて・・・」
それに幽さんはこう答えた。
幽「ああ、次と言っても、そんなにすぐではない。五日後だ。詳しい内容は、後で説明するから。それ以外に質問はあるか?ないなら切るぞ」
一兎「はい、大丈夫です」
俺がそう答えた。すると
幽「じゃあ、切るぞ。通信終了」
と幽さんは通話を終わらせた。その直後、俺は空間を移動し、本部に帰還した。
俺には師匠の月夜見さんと幽さんと俺しか知らない秘密があった。
この秘密は知られれば世間を混乱に陥れるほどの、大きな秘密だ。
その秘密とは、俺が妖怪の血を引く人間。つまり、半人半妖であるということだ。ちなみに、妖怪の存在は世間に知れ渡ってない。
この秘密はできるだけ隠さなければならなかった。
しかし、そんな行動は次の任務が原因で、意味を成さなくなった。